お子さんの進学にかかる教育費は、公立・私立や地域によって大きく異なります。受験を控えた今だからこそ、中学から大学までにどれくらいのお金が必要なのかを知り、計画的な準備を進めていきたいものです。
この記事では、最新の文部科学省調査データと実際のご家庭の体験をもとに、教育費の全体像とケース別の詳細な内訳をわかりやすく解説します。お子さんの将来を支えるための教育費について一緒に考えていきましょう。
※この記事は2025年8月時点の情報をもとに作成しています。制度や金額は変更される可能性があるため、最新情報は各公式機関でご確認ください。
中学・高校・大学にかかる教育費の平均とは?
お子さんの進学を考えるとき、まず気になるのが「実際に教育費はいくらかかるの?」ということではないでしょうか。教育費は年々増加傾向にあり、家庭の選択によって大きく変わるのが現実です。ここでは文部科学省の最新データをもとに、教育費の全体像をわかりやすく解説します。
文部科学省が2年ごとに実施している「令和5年度子供の学習費調査」(2024年12月発表の最新データ)によると、年間の学習費総額(学校教育費+学校給食費+学校外活動費)は以下のとおりです。
中学校の年間教育費
- 公立中学校:約54万円
- 私立中学校:約156万円
- 差額:約102万円(私立は公立の約2.9倍)
高校の年間教育費
- 公立高校:約60万円
- 私立高校:約103万円
- 差額:約43万円(私立は公立の約1.7倍)
大学の年間教育費
- 国公立大学:約82万円
- 私立大学(文系):約120万円
- 私立大学(理系・医歯系除く):約153万円
前回調査(令和3年度)から比べて、私立中学校で約12万円、公立高校で約8万円の増加となっており、物価高騰の影響もあり教育費の負担が重くなっていることがわかります。
この数字を見ると、公立と私立の差は中学校でとくに大きくなっています。私立中学校の費用は公立の約3倍近くになることから、中学受験を検討されるご家庭では早めの資金準備が必要になります。
教育費は学年が上がるにつれて増加する傾向があります。とくに受験を控える学年では、塾代や模試代などの学校外活動費が大幅に増加することが多く、家計への影響も大きくなります。
※通学費や受験関連費、模試・塾代などは別途必要になる場合があります。
教育費の「見落としがちな項目」とは?
学校に支払う授業料や給食費は事前にわかりやすく提示されますが、実際には「あれも必要、これも必要」と予想以上の出費が重なることがあります。とくに進学時や受験時期には、思わぬ費用が発生することも。ここでは、教育費を考える際に見落としがちな項目について、具体的に紹介します。
模試・塾代・受験料などの学校外費用の実態
学校に支払うお金以外に、お子さんの学力向上や受験対策のための費用が大きな負担となることがあります。令和5年度の調査では、この「学校外活動費(学校外活動費のうち補助学習費)」が教育費全体に占める割合は決して小さくありません。
塾・予備校費用の実態
- 公立中学校:年間約27万円
- 公立高校:年間約20万円
- 私立中学校:年間約23万円
- 私立高校:年間約17万円
注目したいのは、公立校に通うお子さんの方が塾代などの補助学習費が高い傾向にあることです。
大学受験では、私立大学の受験料が1校あたり3万~4万円かかります。複数校を併願する場合、10校以上受験することも珍しくなく、受験料だけで30万~40万円に達するケースもあります。また、遠方の大学を受験する際の交通費や宿泊費も含めると、さらに費用がかさみます。
年間を通して受ける模試や各種検定の受験料も積み重なると、大きな金額になります。とくに高校3年生の時期には、月に数回の模試を受けることもあり、年間で10万~15万円程度の出費となることもあります。
通学費・制服代・教材費などの初期費用
入学時や学年が変わるタイミングで発生する費用も、家計にとって大きな負担となります。これらは一度に支払うことが多いため、事前の準備が重要です。
公立高校でも、制服・通学かばん・体操服・指定靴などの初期費用に5万〜10万円前後かかることがあります。
令和5年度の調査では、「通学関係費」が前回調査から増加傾向にあり、制服の高額化が一因として指摘されています。とくに機能性やデザイン性を重視した制服を採用する学校が増えており、保護者の負担が重くなっています。
継続的にかかる費用
- 通学定期代:月5,000~10,000円
- 昼食代:月5,000~8,000円
- 部活動費:年間3万~10万円
通学定期代は年間6万~12万円程度の負担です。昼食代については、高校では給食制度がない学校が多いため、お弁当を持参するか学校の購買や学食、近隣店舗を利用することになります。部活動費では、ユニフォーム代や道具代、遠征時の交通費や宿泊費などが含まれ、運動部ではとくに費用がかさむ傾向があります。
GIGAスクール構想により、タブレットやパソコンの活用が進んでいますが、周辺機器やソフトウェアの購入費が保護者負担となるケースが増えています。令和5年度調査でも、「図書・学用品・実習材料費等」が大幅に増加しており、ICT関連費用の影響が見られます。
これらの費用は、日々の家計からは見えにくいものの、年間を通して考えると教育費の大きな部分を占めています。お子さんの成長段階に応じて、どのような費用が発生する可能性があるかを事前に把握しておくことで、計画的な準備ができるようになります。
家庭の状況別|教育費のケーススタディ
ここからは、中学から大学まで教育費がいくらかかるのか、ケース別に見ていきましょう。
ケース① 公立中→公立高→国立大
経済的負担をもっとも抑えられるルートですが、それでも相当な準備が必要になります。
年間費用の推移
- 公立中学校3年間:約162万円(年間約54万円×3年)
- 公立高校3年間:約180万円(年間約60万円×3年)
すべて公立の場合は約600万円(幼稚園3歳から高校卒業までの15年間)程度かかり、国公立大学進学の場合は、この金額に大学4年間の費用(約242万円)が加わります。
大学では入学後にアルバイトや奨学金で生活費を補助する家庭も多く見られ、通学圏内の大学を選択することで、ひとり暮らしにかかる費用を抑えられます。
「公立だから安心」と思われがちですが、大学受験時の塾代や模試代、私立大学の併願受験費用も含めると、年間100万円を超える場合もあるため、計画的な準備が重要です。
ケース② 私立中→私立高→私立大文系
中学受験から大学まで私立一貫の場合、教育費はもっとも高額になりますが、安定した教育環境や進学実績というメリットがあります。
年間費用の推移例
- 私立中学校3年間:約468万円(年間約156万円×3年)
- 私立高校3年間:約309万円(年間約103万円×3年)
- 私立大学(文系)4年間:約413万円(初年度約119万円、2年目以降約98万円×3年)
このケースの場合、15年間累計では 1,500万〜2,000万円超となるケースがあります。
私立校では理系進学時にさらに費用が増加する傾向があるため、お子さんの進路希望に応じた資金計画を立てることが大切です。
ケース③ 公立中→私立高→国公立大
高校で私立を選択することで、進学実績やサポート体制を重視する一方で、大学は国公立で費用を抑えるパターンです。
年間費用の推移
- 公立中学校3年間:約162万円(年間約54万円×3年)
- 私立高校3年間:約309万円(年間約103万円×3年)
- 国公立大学4年間:約242万円
高校時代の費用がかさむ分、合計で900万〜1,200万円程度を見込んでおくと安心できます。私立高校の特待制度が利用できれば、さらに費用を抑えることも可能です。
お子さんの興味や適性、ご家庭の教育方針と経済状況を総合的に考慮して、最適な進路選択を検討されることをおすすめします。
参考:「令和5年度子供の学習費調査 」
教育費の備え方|家庭でできる対策とは?
「これだけの教育費、どうやって準備すればいいの?」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。教育費は長期間にわたって必要となるため、早めの準備と複数の方法を組み合わせることが大切です。ここでは、家庭でできる具体的な対策をご紹介します。
学資保険やNISAなどを組み合わせて計画的に準備する
お子さんの将来の教育費を考えるとき、代表的な準備方法として学資保険やNISAの活用が挙げられます。
学資保険は契約時に計画的に貯蓄できる仕組みがあり、満期時にまとまった資金を受け取れるのが特徴です。
以前はジュニアNISAが存在しましたが、2023年末で廃止となっています。NISAで教育資金の準備をしたい場合は、親名義のNISA口座を利用してください。
ただし、どちらの方法にも途中解約による元本割れリスクや制度変更の可能性があるため、ひとつに絞らず複数の手段を組み合わせることが安心につながります。家庭の状況やリスク許容度にあわせて検討しましょう。
自治体・学校の支援制度を上手に活用する
教育費の負担を軽減するためには、国や自治体、学校が用意している支援制度をしっかり把握しておくことが大切です。たとえば、授業料減免制度や就学支援金、高校の特待制度、大学の奨学金制度などがあります。
これらの制度には所得制限や申請期限が設けられている場合が多く、「もっと早く知っていれば…」という声も少なくありません。条件や申請時期を前もって確認し、活用できる支援を逃さないようにすることがポイントです。
授業料だけでなく塾や受験費用まで含めた総額を把握する
教育費というと授業料だけを思い浮かべがちですが、模試代・塾代・受験料・通学費なども含めた総額を考える必要があります。たとえば、中学受験から大学卒業まで進学する場合、進路や学校の種類によって数百万円から数千万円と大きく変動します。
家庭の教育方針やお子さんの進路にあわせて、総合的なシミュレーションをおこなうことが大切です。具体的な数字を把握しておくことで、将来の不安を減らし、安心して受験や進学に臨めます。
教育費の準備は、決して一人で抱え込む必要はありません。学校の先生、ファイナンシャルプランナー、銀行の窓口などで相談できますので、ご家庭に最適な方法を見つけてください。
- 中山 朋子
Ameba学校探し 編集者
幼少期からピアノ、書道、そろばん、テニス、英会話、塾と習い事の日々を送る。地方の高校から都内の大学に進学し、卒業後は出版社に勤務。ワーキングホリデーを利用して渡仏後、ILPGAに進学し、Phonétiqueについて学ぶ。帰国後は広告代理店勤務を経て、再びメディア業界に。高校受験を控える子を持つ親として、「Ameba学校探し」では保護者目線の有益な情報をお届けする記事づくりを目指しています。