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国立・私立・公立高校|それぞれの違いと家庭にあった選び方

高校受験を考えるなかで、「公立」「私立」「国立」どの学校がわが子にあっているのか、悩む保護者の方も多いのではないでしょうか。それぞれの高校は、特色や教育方針、学費、進路指導のあり方が大きく異なります。

お子さんの個性や将来の目標、そして家庭の方針にあわせた選択が何より大切です。本記事では、公立・私立・国立高校それぞれの特徴をわかりやすく整理し、メリット・デメリットや向いている家庭の特徴について詳しく解説します。

※本記事は2025年7月時点の情報に基づいています。最新の制度や費用については、文部科学省の公式サイトや各学校、各都道府県の教育委員会にてご確認ください。

国立・私立・公立│それぞれの高校の特徴を知ろう

高校外観イメージ画像

高校選びを始める前に、まずは3つのタイプの高校の基本的な特徴を理解しておきましょう。

設置者や運営方針の違いによって、教育内容や学費、進路指導の方法が大きく変わってきます。

【公立高校】地域に根ざし、コストを抑えた安定進学

公立高校は、都道府県や市町村が設置・運営する高校で、地域の中学生にとってもっとも身近な進学先です。公立高校は学費の安さが最大の魅力で、年間授業料は所得に応じて無償化制度が適用されます。

地域密着型の教育方針であることが多く、幅広い学力層の生徒が学んでおり、多様な価値観に触れる機会があります。

教育内容は、学習指導要領に基づいた標準的なカリキュラムが中心となります。教員の異動があるため学校全体としての一貫した特色は私立ほど強くありませんが、その分バランスの取れた教育を受けることができます。

近年は、進学重点校や専門学科(理数科・国際科など)を設置する学校も増えており、多様な選択肢が用意されています。 部活動や学校行事も充実しており、高校生活を幅広く楽しめる環境が整っています。

公立高校が向いている家庭
  • 教育費をできるだけ抑えたい
  • 地元の学校でしっかりとした基礎学力を身につけさせたい
  • 多様な友だち関係のなかで社会性を育ませたい
  • 部活動や学校行事も大切にしたい

【私立高校】独自の教育方針と充実した学習環境

私立高校は、学校法人が運営しており、各校が独自の教育理念や方針を掲げているのが特徴です。

特色ある教育プログラムを展開しており、お子さんの興味や将来の目標にあわせた選択が可能。授業の進度が早く、大学受験を意識したカリキュラムを組んでいる学校が多く見られます。

中高一貫校では6年間を通した体系的な学習計画により、無理のない大学受験準備が可能です。 ICT教育や探究学習、国際教育に力を入れている学校も多く、時代に応じた教育を受けることができます。

設備面では最新の施設や充実した学習環境が整っていることが多く、少人数制クラスできめ細かな指導を受けられる学校もあります。

ただし、学費は公立高校と比較すると高くなります。 高校の授業料無償化制度の対象となる場合もありますが、入学金や施設費、制服代などを含めた総費用で検討することをおすすめします。

私立高校が向いている家庭
  • 難関大学進学を目指している
  • 子どもの個性や特性を活かした教育を受けさせたい
  • 充実した学習環境や最新の設備を重視したい
  • 学校の教育理念に共感できる

【国立高校】学術重視の伝統校、少数精鋭の教育環境

国立高校は、国立大学法人が設置する高校で、全国に数校しかない希少な選択肢です。代表的な学校として、筑波大学附属高等学校東京学芸大学附属高等学校、大阪教育大学附属高等学校などがあり、多くが中高一貫制を採用しています。

教育実習の受け入れや大学との連携授業など、実験的・先進的な教育プログラムを取り入れているのが特徴です。

定員が少なく(1学年80~120名程度)、質の高い少人数教育を受けることができます。 学習意欲の高い生徒が集まるため、切磋琢磨しながら学力を伸ばせる環境が整っています。

大学進学実績も高く、とくに国立大学への進学率が高い傾向にあります。 自主性を重んじる校風で、生徒の自主的な学習や活動を重視する教育方針を取っています。

入学試験の倍率は3~4倍程度と非常に高く、十分な準備と対策が必要です。 学費は公立高校とほぼ同程度で、経済的負担は比較的軽くなります。

国立高校が向いている家庭
  • 高い学習意欲をもつ子どもの能力をさらに伸ばしたい
  • 少人数での質の高い教育を求めている
  • 自主性を重んじる教育方針に共感できる
  • 大学進学を重視している

国立・私立・公立高校の費用の違い

どのタイプの高校でも、授業料以外に通学関係費(制服・通学用品など)、図書・学用品・実習材料費、修学旅行費、教科外活動費(部活動費など)など、別途かかる費用があります。

文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」によると、これらの費用は以下の通りです。

公立高校の場合(年間)
  • 通学関係費:約9.8万円(27.8%)
  • 図書・学用品・実習材料費など:約6.2万円(17.7%)
  • 修学旅行費など:約3.6万円(10.4%)
  • 教科外活動費:約4.9万円(14.0%)
私立高校の場合(年間)
  • 通学関係費:約14万円(18.6%)
  • 図書・学用品・実習材料費など:約7.5万円(9.7%)
  • 修学旅行費など:約6万円(7.7%)
  • 教科外活動費:約5.7万円(7.4%)

国立高校は制度上、公立高校と同様の扱いを受けており、費用水準は公立高校とほぼ同程度となります。ただし、学校により若干の差があります。

たとえば筑波大学附属高校では、校外学習費や 学習活動関連経費などの学校生活に関わる諸費用として約40~45万円程度必要とされています。

私立高校では授業料以外に施設費や設備費が追加でかかる場合が多く、総合的な費用で比較検討することをおすすめします。

お子さんの性格や学習スタイル、ご家庭の教育方針と照らし合わせながら、どのタイプが最適かを考えてみてはいかがでしょうか。

子どもや家庭の状況にあわせた高校の選び方

子どものにあった高校選びのイメージ画像

高校の基本的な特徴を理解したら、次はお子さんの個性やご家庭の状況にあわせた具体的な選び方を考えてみましょう。

一人ひとり異なる状況だからこそ、さまざまな角度から検討することが大切です。

①学力・志望校から逆算して選ぶ

お子さんの現在の学力と将来の目標を出発点に考える方法です。

まずは模試の結果や定期テストの成績から、お子さんの現在の学力レベルを把握しましょう。 得意科目・苦手科目のバランスや、勉強に対する取り組み方も重要な判断材料になります。

「今は成績が伸び悩んでいるけれど、環境が変われば頑張れるかもしれない」 「コツコツ型なので、着実に力をつけられる学校がよいかも」 といったお子さんの学習特性も考慮に入れてください。

また、将来の目標から逆算して考えることも大事です。大学進学を目指す場合は、志望する大学のレベルや分野から高校を選ぶのもひとつの方法です。

難関国立大学を目指すなら、進学実績の高い私立高校や国立高校、公立の進学重点校が候補になります。

特定の分野(医療系、芸術系、工学系など)を志望する場合は、その分野に強い高校や専門的なコースがある学校を検討してみてください。

一方で、中堅大学なら地元の公立でも十分なサポートが受けられます。多くの公立高校では進路指導体制が整っており、地域の大学との連携や推薦入試制度も充実しています。

ただし、高校入学時点で将来の目標が明確でないお子さんも多くいます。そのような場合は、幅広い選択肢を残せる学校選びを心がけるとよいでしょう。

お子さんの現在の学力と志望校との間に大きな差がある場合は、高校3年間でどこまで伸ばせるかを現実的に考えることが大切です。

無理な目標設定はお子さんにとって負担になることもあります。お子さんが「頑張ってみたい」と思える範囲で挑戦ができる学校を選んであげてください。

②通学時間・生活スタイルとのバランスを考える

高校への通学は、毎日3年間続くため、お子さんの体力や生活リズムを考慮した選択をしましょう。

一般的に、往復1時間以内が平均であり、理想的です。 通学時間が長すぎると、睡眠時間や家庭学習の時間に影響が出ることがあります。

電車やバスの混雑状況、乗り換えの回数、最寄り駅から学校までの距離なども確認しておきましょう。 悪天候時の交通状況についても事前に調べておくと安心です。

お子さんが続けたい部活動や習い事がある場合は、それらとの両立を考えて学校を選びましょう。

部活動に力を入れたい場合は、その部活動が盛んな学校や、活動時間が希望にあう学校を選ぶことが大切です。 逆に、塾や習い事を優先したい場合は、放課後の時間を確保しやすい学校を検討してください。

また、保護者の方の働き方や家庭の事情も考慮に入れる必要があります。学校行事への参加頻度、PTA活動の内容、緊急時の連絡体制なども事前に確認しておくとよいでしょう。 共働きのご家庭では、学校の理解や配慮があるかどうかも重要なポイントです。

お子さんが安心して学校生活を送れるよう、ご家庭でサポートできる範囲を踏まえて選択してください。

③教育費・進学費用から現実的に判断する

教育費は家計に大きく関わる重要な検討事項です。 3年間の総額で考えることが大切です。

授業料だけでなく、入学金、施設費、制服代、教材費、修学旅行費、部活動費なども含めて3年間の総費用で計算しましょう。

私立高校では学校によって費用に大きな差があるため、必ず各校の詳細な費用を確認してください。

なお、高校は、高等学校等就学支援金制度により、世帯年収に応じて授業料の支援を受けることができます。 私立高校の場合、世帯年収590万円未満の世帯では年額39万6千円まで支援されます。

都道府県独自の奨学金制度もありますので、お住まいの地域の制度を調べてみてください。経済的な理由で進学を諦める必要はありません。

また、高校の学費だけでなく、大学進学時の費用も考慮に入れておくことをおすすめします。

私立高校に進学した場合でも、大学は国公立を目指すという選択肢もあります。逆に、高校は公立で費用を抑え、大学進学時に備えるという考え方もあります。

ご家庭の価値観や教育方針にあわせて、バランスの取れた選択をしてください。

【チェックリスト】高校選びの判断ポイント

以下のチェックリストを参考に、ご家庭の状況を整理してみてください。

お子さんについて
  • 将来の目標は明確か
  • 勉強への取り組み方はどうか
  • 部活動への希望はあるか
  • 通学時間は適切か
ご家庭について
  • 教育費の予算は明確か
  • サポート体制は整うか
  • 教育方針に共感できるか
  • 通学の安全性は確保済みか
  • 緊急時の対応は可能か
学校について
  • 進学実績は希望にあうか
  • 校風や雰囲気はあうか
  • 設備や環境は充実するか
  • 進路指導体制は整うか
  • 学校行事や部活は魅力的か

これらの項目をひとつずつ検討することで、お子さんにとって最適な高校が見えてきます。すべての条件を満たす完璧な学校はない場合もありますが、優先順位をつけて検討してみてください。

迷ったときの判断ポイントと親のサポート

高校の判断ポイントのイメージ画像

いくら情報を集めても、最終的な決断に迷うのは当然のことです。

そんなときに大切にしたいポイントと、保護者としてのサポート方法を紹介します。

①実際に学校見学や説明会に行ってみる

パンフレットや学校の公式サイトの情報だけではわからない「学校の雰囲気」を肌で感じることが、もっとも重要な判断材料になります。

多くの高校では夏休み期間中にオープンスクールや学校説明会を開催しています。実際に校舎を歩き、授業の様子を見学し、先生や在校生と話をする機会を大切にしてください。

お子さんが「この学校で3年間過ごしたい」と感じられるかどうかは、実際に足を運んでみないとわからないものです。できれば複数の学校を見学して、比較検討することをおすすめします。

学校見学で確認したいポイントは下記のとおりです。

学校見学での確認ポイント
  • 校舎や設備の状況(清潔さ、充実度)
  • 生徒たちの表情や様子(明るく活発か、落ち着いているか)
  • 先生方の対応や雰囲気
  • 部活動や課外活動の活発さ
  • 通学路の安全性や利便性

一般的な説明会では聞けない、お子さん個別の相談ができる機会があれば積極的に参加してみてください。現在の学力や将来の目標に対して、その学校でどのようなサポートが受けられるかを具体的に聞くことができます。

お子さんの性格や特性について相談すれば、その学校の環境があうかどうかのアドバイスを受けることもできるでしょう。

また、学校行事は、その学校の校風や生徒の雰囲気をもっともよく表すイベントです。可能であれば文化祭や体育祭を見学し、生徒たちが生き生きと活動している様子を見てみてください。

お子さんが「この学校の一員になりたい」と思えるような魅力を感じられるかどうかが重要なポイントです。

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【高校入試】参加する説明会はどう選ぶ?説明会の種類や特徴、当日のチェックリストを紹介

Ameba学校探し

②子どもの声を尊重し、親子で話し合う

最終的に3年間通うのはお子さん自身です。 保護者の意見も大切ですが、お子さんの気持ちを第一に考えることが何より重要です。

「どの学校に行きたいか」だけでなく、「なぜその学校を選びたいのか」「高校でどんなことを頑張りたいのか」について、じっくりと話を聞いてあげてください。

ご家庭の教育方針や価値観について、お子さんと率直に話し合ってみてください。「なぜ高校に行くのか」「高校生活で何を大切にしたいか」といった根本的な部分を共有することで、学校選びの方向性が見えてくるはずです。

「○○高校に入らなければダメ」「絶対に大学に行かなくては」といったプレッシャーは、お子さんの選択の幅を狭めてしまう可能性があります。

どのような選択をしても、お子さんを支え続けるという姿勢を示すことで、お子さんも安心して自分の気持ちを表現できるようになるでしょう。大切なのは、選択した学校でお子さんが前向きに頑張れるよう、保護者として支えることです。完璧な選択を求めすぎず、お子さんと一緒に最善の選択を目指してください。

また、高校の情報収集はお子さん一人に任せるのではなく、保護者の方も積極的に情報を集めるようにしましょう。ただし、集めた情報を押し付けるのではなく、お子さんと一緒に検討する材料として活用することが大切です。

学校の公式サイトや募集要項の確認、説明会への参加、先輩の保護者からの情報収集など、さまざまな角度から情報を集めて整理し、家族で話し合った結果として、最終的な判断はお子さんの意思を尊重してあげてください。

「自分で選んだ学校だから頑張ろう」という気持ちは、3年間の高校生活を支える大きな原動力になります。たとえ保護者の方から見て「もっとよい選択があったのでは」と思うような場合でも、お子さんの選択を信じて支えてあげることが何より大切です。

どのような選択をしても、お子さんの頑張りと保護者の方の支えがあれば、きっと充実した3年間を過ごすことができるでしょう。

国立・私立・公立高校の特徴を知り、家庭の状況を踏まえて高校を選ぼう

高校選びは、お子さんの将来に大きく影響する重要な決断です。公立高校は地域に根ざした安定した教育環境と経済的負担の軽さが魅力です。私立高校は独自の教育プログラムと充実した学習環境で、お子さんの個性を伸ばしてくれます。

どのタイプの高校にもそれぞれのよさがあり、「正解」はひとつではありません。大切なのは、お子さんの性格や学習スタイル、将来の目標、そしてご家庭の状況にもっとも適した学校を見つけることです。

本記事で紹介した内容も参考に、ご家庭で大切にしたい価値観や優先順位を明確にし、学費、通学時間、教育内容、進路指導など、さまざまな要素のなかから何をもっとも重視するかを家族で話し合ってみてください。

どの学校を選んでも、お子さんが前向きに取り組めるよう保護者として支え続け、現在の学力や成績にとらわれすぎず、お子さんの可能性を信じてあげましょう。

高校選びは確かに重要な決断ですが、最終的にはお子さんがどのような気持ちで高校生活を送るかが一番大切です。親子で十分に話し合い、お子さんが納得して選択した学校であれば、きっと素晴らしい3年間を過ごすことができるでしょう。

お子さんの新しいスタートを、心から応援しています。

この記事の編集者

  • 中山 朋子
    Ameba学校探し 編集者

    幼少期からピアノ、書道、そろばん、テニス、英会話、塾と習い事の日々を送る。地方の高校から都内の大学に進学し、卒業後は出版社に勤務。ワーキングホリデーを利用して渡仏後、ILPGAに進学し、Phonétiqueについて学ぶ。帰国後は広告代理店勤務を経て、再びメディア業界に。高校受験を控える子を持つ親として、「Ameba学校探し」では保護者目線の有益な情報をお届けする記事づくりを目指しています。