中学進学前の子をもつ保護者の方のなかには、「もしも自分の子どもがいじめにあってしまったら、どうすればいいのだろう」という不安が、一度はよぎるかもしれません。
「うちの子は大丈夫」と思いたい気持ちと、「もしものときはどうしよう」という不安のあいだで揺れ動くのが、中学進学を控えた保護者の率直な心境ではないでしょうか。
中学校でいじめ対策はどのようにされているのか、どのような対策が取られているのかといった点について、わかりやすく解説していきます。
学校におけるいじめは増加傾向にある
残念ながら、いじめの件数は増加傾向にあります。小学生、中学生、高校生と学年が上がるにつれて認知件数は減るものの、「自分の子どもは絶対に大丈夫」と誰もがいえる状況ではないのが事実です。
文部科学省が2024年10月に発表した調査結果によると、いじめの認知件数は732,568件(対前年で50,620件増)となっています。学校種別では、小学校が588,930件、中学校が122,703件、高校が17,611件、特別支援学校が3,324件となっています。
- 小学校:588,930件
- 中学校:122,703件
- 高等学校:17,611件
- 特別支援学校:3,324件
また、生命や心身などに重大な被害が生じた疑いがあったり、長期欠席を余儀なくされたりするいじめの「重大事態」は1,306件(同387件増)あり、過去最多となっています。
さらに心配なのは、このうち、4割近くは「重大事態」と把握するまで学校側がいじめとして認知していなかったということです。これは、いじめが見えにくい形で起こっていることを示しています。
また、いじめは学校だけではなく、習い事や地域のコミュニティなど、さまざまな場所で起こりうるものです。スマートフォンやSNSの普及により、学校外でもネット上のいじめが発生する可能性があることも、現代の保護者が知っておくべき現実です。
※参考:文部科学省「令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」
いじめに対する国・自治体の方針
いじめ問題の深刻化に対応するため、国や自治体では包括的な防止策の策定に取り組んでいます。その根幹となるのが、2013年に制定された「いじめ防止対策推進法」です。
「いじめ防止対策推進法」では、いじめを「児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校に在籍しているなど当該児童生徒と一定の人的関係にあるほかの児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの」(※)と定義しています。
この法律に基づいて、国は以下のような基本的な方針を定めています。
- いじめの未然防止の取り組み強化
- 早期発見・早期対応の体制整備
- 学校・家庭・地域の連携促進
- 重大事態への適切な対処
文部科学省は2024年に「不登校・いじめ 緊急対策パッケージ」を発表し、いじめの重大事態化を防ぐための早期発見・早期支援を強化する取り組みを進めています。
具体的には、以下のような対策が実施されています。
- アプリなどによる心の健康観察の推進
- 1人1台端末を活用した子どものSOS相談窓口の充実
- スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの配置拡充
自治体レベルでも、各都道府県・市町村がそれぞれの実情に応じた「地方いじめ防止基本方針」を策定し、具体的な取り組みを実施しています。
※引用:文部科学省「いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号)第2条 」
※参考:文部科学省「いじめの防止等のための基本的な方針 」
※参考:文部科学省「不登校・いじめ 緊急対策パッケージ」
いじめ対策をしている学校はある?
保護者として気になるのが、「進学先として候補の中学校は、どのようないじめ対策をしてくれるのだろう?」という点でしょう。
いじめ防止対策推進法では、「学校は、いじめ防止基本方針又は地方いじめ防止基本方針を参酌し、その学校の実情に応じ、当該学校におけるいじめの防止等のための対策に関する基本的な方針を定めるものとする。」(※)と定められています。
つまり、すべての学校は法律上、いじめ防止のための基本方針を定める義務があるのです。
しかし、この方針を保護者がわかりやすい形で公開している学校と、そうでない学校があるのが現状です。公式ホームページで具体的な取り組みを紹介している学校なら、より安心して学校選びができるでしょう。
学校では、以下のような取り組みが一般的におこなわれています。
- 長期休み前のいじめホットライン資料配布
- 定期的ないじめアンケート実施
- 教職員向けいじめ防止研修
- いじめ対策組織の設置
- 相談しやすい環境づくり
学校におけるいじめの問題に対する日常の取り組みのうち、文部科学省の令和5年度調査では、校内研修を実施している学校は85.7%となっており、更なる向上に向けた取り組みが進められています。各学校がより積極的にいじめ問題への取り組みを実施するよう、継続的な働きかけがおこなわれています。
学校を選ぶ際は、こうした取り組みがどの程度充実しているかを確認することが大切です。
※引用:文部科学省「いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号)第13条」
※参考:文部科学省「令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」
いじめに対する方針を明記している中学校の例
なかには、いじめに対する方針を公式ホームページや資料で詳しく公開している中学校があります。内容に大きな違いはないものの、学校のいじめ対策への取り組み姿勢や具体的な対応方法がわかることで、保護者にとって安心できる判断材料のひとつになります。
公立中学校の例
多くの公立中学校では、市町村教育委員会の方針に基づいた基本方針を策定しています。たとえば、秦野市の中学校では、いじめ防止基本方針において以下のような内容を明記しています。
- いじめの定義と学校の基本的な考え方
- 未然防止のための取り組み
- 早期発見のための体制
- いじめへの対処方法
- 家庭・地域との連携方法
※参考:秦野市教育委員会「いじめ防止基本方針」
私立中学校の例
私立中学校では、独自性を持った方針を策定している場合が多く見られます。
たとえば山手学院中学校・高等学校では、同校公式サイトにおいて「いじめ防止基本方針」として、教育理念と関連付けた具体的な防止対策を公表しています。また、大阪樟蔭中学校では、スクールカウンセラーとの連携を重視した体制を明記しており、私立ならではの少人数教育を活かした丁寧な対応を特色としています。
※参考:山手学院中学校・高等学校「いじめ防止基本方針」
※参考:大阪樟蔭中学校「いじめ防止基本方針」
国立中学校の例
国立大学附属中学校では、研究機関としての特色を活かしたいじめ防止策を実施している場合があります。 たとえば、お茶の水女子大学附属中学校などでは、大学との連携による専門的なアプローチを取り入れた方針を策定しています。
学校選択の際は、これらの方針が公開されているかどうか、また内容が具体的で実効性があるかどうかを確認することをおすすめします。
※参考:お茶の水女子大学附属中学校「いじめ防止基本方針 」
中学生の子どもをいじめから守るためには
中学生になるお子さんをいじめから守るために、親としてできることは何でしょうか。いじめにあっても、「いじめられているなんていえない」「親に心配をかけたくない」などの気持ちから、保護者に打ち明けられず悩んでしまうお子さんも多いものです。
お子さんと話す時間を積極的につくり、いじめのサインを見逃さないようにすることが大切です。
いじめのサインを発見する方法
いじめのサインと考えられる項目について、チェックリストでご紹介します。
- 学校に行きたがらない、行くのを嫌がる
- 「学校をやめたい」「転校したい」といい出す
- 朝になると体調不良を訴えることが増えた
- 授業参観や学校行事を見に来てほしがらない
- 友だちの話をしなくなった
- 友だちからの電話やメールを嫌がる
- 休日に友だちと遊ばなくなった
- 一緒に登下校する友だちがいなくなった
- 教科書やノートが破れている、落書きされている
- 持ちものがなくなったり、壊されたりしている
- 身体に不自然な傷やあざがある
- 服が汚れたり破れたりして帰ってくる
- 食欲がなくなった、または食べ過ぎるようになった
- 夜眠れない、悪夢を見ることが増えた
- 攻撃的になった、または無気力になった
- 部屋に閉じこもるようになった
これらのサインが見られた場合は、まずはお子さんとゆっくり話す時間を設けることが大切です。問い詰めるのではなく、「最近どう?」「何か困ったことはない?」といった自然な会話から始めてみてください。
※参考:政府広報オンライン「ここにもあります!相談できる窓口が。『いじめ』しない・させない・見逃さない 」
いじめの相談先を知っておくことも大切
もしもいじめを疑うサインを見つけたり、お子さんからいじめの相談を受けたりしたら、保護者の方もとても不安になるものです。学校と相談することが大切ではありますが、迅速な解決が何よりも大切です。以下の相談先を知っておくことをおすすめします。
【主な相談窓口】
- 電話番号:0120-0-78310
- いじめ問題やそのほかの子どものSOS全般に悩む子どもや保護者などが、いつでも相談機関に相談できるよう、都道府県及び指定都市教育委員会が夜間・休日を含めて24時間対応可能な相談体制を整備
- 電話番号:0120-007-110(フリーダイヤル)
- いじめ、虐待など、こどもの人権問題に関する専用相談電話です。子どもの保護者など大人が利用することもできます
- 受付時間:平日8時30分~17時15分
各自治体の教育相談窓口
- お住まいの自治体教育委員会が設置
- 面談やメール相談も可能な場合が多い
相談は無料で、個人の秘密は厳守されます。一人で抱え込まず、適切な支援を受けることが、お子さんを守ることにつながります。
※参考:文部科学省「子供(こども)のSOSの相談窓口 」
※参考:法務省「こどもの人権110番 」
学校のいじめ対策方針は公式情報を確認しよう
「中学生になる子どもがいじめにあったらどうしよう…」と不安を感じる場合に重視したいのが、中学校のいじめ対策方針です。学校選択の際は、以下のポイントを確認することをおすすめします。
【学校を選ぶときのチェックポイント】
- 学校ホームページで方針を確認
- 具体的な取り組み内容の記載
- 更新日と現在の状況
- スクールカウンセラーの配置状況
- 相談窓口の設置状況
- 保護者向け相談の実施状況
- 定期的ないじめアンケートの実施
- 教職員研修の実施状況
- 学校行事での人権教育の取り組み
とはいえ、教師や親には見えない部分でいじめにあう可能性もあります。完璧な対策は存在しないという前提で、以下のことを心がけることが大切です。
また家庭でできる継続的な取り組みは下記のとおりです。
- 積極的にお子さんと会話してサインを見逃さないように意識すること
- いじめられていると感じたら各相談機関を利用することを視野に入れること
- 学校との良好な関係を築き、何かあったときに相談しやすい環境をつくること
お子さんの安全と健やかな成長のために、学校任せにするのではなく、家庭・学校・地域が連携していじめの防止に取り組むことが何より大切です。
※参考:文部科学省.「いじめの防止等のための基本的な方針 」(2025-07-23)
よくある質問(FAQ)
いじめかどうかの判断基準は何ですか?
- いじめ防止対策推進法では、相手が「心身の苦痛を感じている」かどうかが重要な判断基準となります。たとえ軽い気持ちでおこなわれた行為でも、受け手が苦痛を感じればいじめに該当する可能性があります。
学校に相談してもすぐに解決されない場合はどうすればいいですか?
- まずは学校での対応状況を確認し、必要に応じて教育委員会や第三者機関への相談を検討してください。24時間子どもSOSダイヤルやこどもの人権110番なども活用できます。
私立中学校と公立中学校でいじめ対策に違いはありますか?
- 基本的な法的義務は同じですが、私立校では独自の教育方針に基づいたより細やかな対応が期待できる場合があります。ただし、学校によって取り組みに差があるため、個別に確認することが大切です。
インターネット上でのいじめにはどう対処すればいいですか?
- まずは証拠を保存し、学校に報告してください。SNSなどでの誹謗中傷は、各プラットフォームの通報機能も活用できます。深刻な場合は警察への相談も検討してください。
子どもがいじめの加害者になってしまった場合はどうすればいいですか?
- まずは事実関係を冷静に確認し、学校と連携して適切な指導をおこなってください。被害者やその保護者への謝罪、再発防止のための取り組みが必要です。
いじめ防止基本方針が公開されていない学校は避けたほうがいいですか?
- 法的には全校が策定義務を負っているため、公開していない場合は学校に問いあわせてみてください。透明性を重視する観点から、公開している学校のほうが安心感があります。
転校を考えるべき状況の判断基準はありますか?
- お子さんの心身に深刻な影響が出ている場合や、学校での解決が困難と判断される場合は転校も選択肢のひとつです。専門機関に相談しながら慎重に判断することをおすすめします。
相談したことが子どもの不利益になることはありませんか?
- 適切な相談機関では秘密が守られ、お子さんの最善の利益を最優先に対応します。むしろ早期の相談が問題の深刻化を防ぐことにつながります。
いじめられやすい子どもの特徴はありますか?
- 文部科学省の調査によると、いじめは外見、性格、成績などに関係なく起こりうるものです。重要なのは、お子さんが『困ったときに相談できる』と感じられる関係性を築くこと、そして『自分には価値がある』という自己肯定感を育むことです。具体的には、日常の何気ない会話を大切にし、お子さんの好きなことや得意なことを一緒に見つけることから始められます。
学校のいじめアンケートで正直に答えても大丈夫ですか?
- 学校のアンケートは適切な対応のための重要な情報源です。正直に答えることで、必要な支援を受けられる可能性が高まります。匿名性が確保されている場合も多くあります。
まとめ
いじめの認知件数は年々増加していますが、これは「いじめを見つけて対処する」意識が高まっていることの表れでもあります。国や自治体、学校が連携していじめ防止に取り組んでいる現在、保護者としてもお子さんを守るための正しい知識と行動が求められています。
学校選択の際は公式な方針を確認し、日ごろからお子さんとのコミュニケーションを大切にし、困ったときには適切な相談先に頼ることで、お子さんにとって安全で充実した学校生活を支えていきましょう。何より大切なのは、お子さんが「困ったときには必ず支えてくれる人がいる」と感じられる環境をつくることです。
※ 本記事の情報は2025年9月時点のものです。最新の情報については、各機関の公式サイトでご確認ください。
- 葉玉 詩帆
Ameba学校探し 編集者
幼少期から高校卒業までに、ピアノやリトミック、新体操、水泳、公文式、塾に通う日々を過ごす。私立中高一貫校を卒業後、都内の大学に進学。東洋史学を専攻し、中東の歴史研究に打ち込む。卒業後、旅行会社の営業を経て2021年より株式会社CyberOwlに入社。オウンドメディア事業部で3年半の業務経験を経て、Ameba塾探しの編集を担当。「Ameba学校探し」では、お子さんにぴったりの学校選びにつなげられる有益な記事づくりを目指しています。