小学生のお子さんを持つ保護者の方にとって、中学校選びは気になるテーマのひとつではないでしょうか。
最近は、公立中学校に進学するだけでなく、私立の中高一貫校や男子校・女子校など、選択肢が広がっています。「うちの子にあった学校は、どうやって選べばいいの?」と悩む方も少なくありません。
そこでこの記事では、中学校選びの基本的な流れや判断基準をわかりやすく紹介します。お子さんの未来につながる進路選びの一歩として、ぜひご活用ください。
- 【中学校選び】はじめに確認したい2つの観点
- お子さんの将来を考える
- 中学受験をするかどうか考える
- 中学受験すると決めたらどうする?中学選びの流れを解説
- ①中学校のタイプを知る
- ②登校時間や学力レベルなど条件を満たす中学校を見つける
- ③説明会や見学・オープンスクールに参加する
- ④志望校・受験校を決める
- お子さんにぴったりの中学校を選ぶ6つの基準
- 校風・教育方針・教育内容│性格にあっているか
- 自宅からのアクセス・交通手段│負担なく通える距離か
- 学校生活│性格にあっているか
- 偏差値│学力があっているか
- 大学合格実績│想定している進学先・同レベルの大学への合格実績はあるか
- 学費│家計を大きく圧迫しない料金か
- 中学校選びにおける注意点
- 親の理想を押し付けない
- 偏差値だけで選ばない
- 中学校を直接確認する
- お子さんの性格にあった中学校選びには保護者のサポートが不可欠
【中学校選び】はじめに確認したい2つの観点
中学校について考え始めたとき、「何から始めればよいのかわからない」と戸惑うことが多いようです。そんなときは、まず次の2つの視点から整理してみましょう。
中学校選びは、お子さんのこれからの人間関係や、将来の人生そのものにも関わる大切な選択です。保護者の希望だけでではなく、お子さん自身の気持ちも尊重しながら、納得のいく選択肢を見つけていきましょう。
お子さんの将来を考える
「大きくなったら、なにになりたい?」
「将来の夢はなに?」
そんな会話をお子さんとされたことがある方もいるのではないでしょうか。成長とともにお子さんの興味や世界が広がり、小さいころとは違う夢や、現実的な目標を持つようになっていることもあります。
たとえば、はっきりと目指したいものがある場合は、その進路に近づきやすい学校も選択肢のひとつになります。理系に関心があるなら理科教育が充実した学校を、海外に興味があるなら英語教育に力を入れている学校を選ぶこともできます。
また、現時点で将来の方向性が決まっていないお子さんも少なくありません。その場合は、まず家庭内で教育方針について話し合いましょう。
学校によって、授業の進み方や部活動の充実度、大学までの内部進学制度の有無などが異なります。お子さんの得意分野を伸ばしたい、のびのびと過ごしてほしいなど、前提となる教育方針を整理しておくことが大切です。
中学受験をするかどうか考える
最近では中学受験に取り組むご家庭が増えており、「周りの子が受験をはじめた」という声を耳にすることも多いようです。
しかし、周囲の状況だけを理由に中学受験を決めるのはおすすめできません。
大切なのは、お子さんにとって中学受験が本当にあっているかどうか、という視点です。無理に受験勉強をさせると、お子さんが勉強自体に苦手意識を持ってしまい、今後に影響を与える可能性もあります。
まずは、お子さんの将来をよく考えて、どんな環境で過ごしてほしいのかをイメージしてみましょう。「中学受験をする」「受験は高校からチャレンジする」といった方向性が見えてきます。
- 中学受験をしない場合:高校受験を見据えた学習習慣や環境をつくる必要がある
- 中学受験をする場合:受験までの流れを理解し、中学校選びを計画的に進める
ここからは、中学受験をする場合の中学選びについて解説していきます。
中学受験すると決めたらどうする?中学選びの流れを解説
中学受験をすると決めたらまず取り組みたいのが、中学校選びのステップを理解することです。
すでに進学したい学校が決まっているケースもありますが、多くの場合はここから情報収集を始めていくことになります。学校のタイプや特徴を知り、通学の距離や学力のレベルなどの条件を整理していく必要があります。
①中学校のタイプを知る
まずは、以下の3つの中学校のタイプを確認し、それぞれの特徴を理解していきましょう。お子さんにふさわしい学校を見つける手がかりになります。
【設置区分】公立・国立・私立
中学校の種類は、「公立」「国立」「私立」の3つに分かれます。それぞれ運営母体や教育方針、費用に違いがあるため、お子さんにあった学びの場を探す参考になります。
- 運営母体:自治体
- 教育の動向:基礎重視・地域密着型
- 授業料:無料
- 運営母体:国立大学法人
- 教育の動向:実験的・先進校が多い
- 授業料:無料
- 運営母体:学校法人
- 教育の動向:独自方針・特色ある教育
- 授業料:あり
※授業料以外の納付金や修学旅行費等は除きます。
最近では、公立中高一貫校も増えており、公立でも中学受験を必要とするケースがあります。学校の公式サイトなどで募集要項を確認しておきましょう。
【性別】共学・男子校・女子校・別学
学校によっては男女共学もあれば、性別で区別された運営をしている場合があります。
学校により異なりますが、それぞれ以下のような特徴が例として挙げられます。
- 共学
男女の垣根なく社会性や多様な価値観に触れやすい - 男子校・女子校
思春期の異性への気兼ねが少なく、集中しやすい学習環境が整う - 別学
男女それぞれにあった指導を受けられ、行事などは協力して取り組む
それぞれに良さがあり、お子さんの性格や生活スタイルにあわせて選ぶことができます。
【宗教】キリスト教(カトリック・プロテスタント)・仏教
宗教系の中学校は、カトリック・プロテスタントなどのキリスト教や、仏教などをベースとした教育理念を持っています。信者である必要はなく、入学後に入信を求められることもありません。
- カトリック
思いやりや奉仕の心を育てる人間教育を重視 - プロテスタント
個性や自立を尊重し、自由な校風が多い - 仏教
感謝や謙虚さを大切にする教育をおこなう
グローバル時代において、多様な考え方に触れられ、お子さんの視野を広げるうえでも魅力的な教育環境といえるでしょう。
②登校時間や学力レベルなど条件を満たす中学校を見つける
次に「無理なく通えるか」「お子さんの学力レベルにあっているか」を確認しましょう。
通学時間については、徒歩や電車など家庭によって条件はさまざまです。毎日のことなので、無理のない範囲で通えるかを必ずチェックしましょう。通学時間は、お子さんの負担を考えて、片道1時間を目安に検討してみてください。
学力面では、現時点での偏差値にとらわれすぎないようにしましょう。ここからの努力次第で目指せる学校もあります。とくに小学校3~4年生であれば、今後の伸びしろに期待できるお子さんも多くいます。
学校情報は、塾の先生から提案をもらったり、学校情報サイトや公式ホームページで調べたりしながら比較検討していきましょう。
③説明会や見学・オープンスクールに参加する
候補となる中学校が見つかったら、必ず実際に足を運んで校風や雰囲気を確認しましょう。
学校説明会や個別相談会では、教育方針や取り組みについての説明が受けられます。オープンスクールや学園祭では、生徒の様子や授業の雰囲気を間近で見られる機会もあります。
受験勉強が本格化する前である小学4〜5年生のうちから複数の学校を見ておくことをおすすめします。なお、イベント情報は、各学校の公式ホームページや資料請求で確認できます。
④志望校・受験校を決める
お子さんや保護者の希望も踏まえて複数の学校を比較していくと、「この学校がいいかな」と感じる学校が絞られてきます。
願書の提出は、多くの学校で6年生の12月~翌年1月ごろです。その前段階として、5年生のうちから学校を調べておくことで、余裕を持って受験対策を進められます。最終的には、6年生の夏休み前までに第一志望校を決定し、志望校別の対策に踏み出すのが理想的です。
お子さんにぴったりの中学校を選ぶ6つの基準
通学時間や学力などの条件に加えて、お子さんの性格や将来を考えて判断したいポイントもあります。とはいえ、「何を基準にすればいいの?」と迷われる方もいるでしょう。
中学校選びの判断基準として、主に以下の6つの項目が挙げられます。
選ぶ基準を理解しておくことで、お子さんにぴったりの学校像が見えてくるでしょう。
校風・教育方針・教育内容│性格にあっているか
もっとも大事なのは、校風や教育方針、教育内容がお子さんの性格にあっているかどうかという点です。
とくに私立中学校では、独自の理念や教育スタイルがあり、「どんな環境で学ばせたいか」によって選ぶ学校も変わってきます。
生徒の個性を尊重する自由な校風の学校もあれば、礼儀や時間管理などを重視する学校もあります。また、スポーツや部活動に力を入れているか、学業を重視しているかという違いもあります。最近では海外大学進学を見据えて、英語教育に特化した学校もあります。
お子さんの性格や希望にふさわしいどうか、学校の公式サイトをチェックしてみましょう。さらに詳しく知りたい場合は、学校説明会でリアルな情報を得ることができます。
自宅からのアクセス・交通手段│負担なく通える距離か
中学受験では、自宅から少し離れた場所にある学校を選ぶことも珍しくありません。しかし、毎日の通学を考えると、通学時間や乗り換え回数などの負担はできるだけ少ないほうが安心です。
「電車で30分以内」「自転車で通える範囲」など、ご家庭にあった通学条件を整理しておくと、学校選びがスムーズになります。
学校生活│性格にあっているか
中学受験をする場合、中高一貫校に進学することがほとんどなので、6年間を学校で過ごすことになります。授業や部活動はもちろん、校内の雰囲気がお子さんの性格にあうかどうかも大切な判断材料です。
たとえば、授業は「講義が中心」のところもあれば、「グループワークが多い」学校もあります。
部活動も「全国大会を目指すレベル」から「自由で楽しく活動する方針」などさまざまです。行事には「文化祭」「修学旅行」「留学制度」なども含まれ、学校によって特色があります。
実際の学校生活の様子は、オープンスクールや学校見学でわかるため、可能な限り足を運んで確認しましょう。
偏差値│学力があっているか
中学受験では、偏差値を目安に学校を選ぶことが一般的ですが、偏差値が高ければよいというわけではありません。
お子さんの学力と学校の学習レベルがあっているかがポイントです。
偏差値が低すぎると学習意欲が湧かず、高すぎると授業についていくのが大変になることもあります。無理のない範囲で「少し背伸びするくらい」がちょうどいいと言われています。
模試結果や塾の先生の意見を参考にしながら、現実的かつ希望を反映した選択を心がけましょう。
大学合格実績│想定している進学先・同レベルの大学への合格実績はあるか
中高一貫校を選ぶ背景として、大学進学を見据えているというご家庭も多いのではないでしょうか。明確な志望校がなくても、「このレベルの大学に進めたら」というイメージがある方は、大学合格実績を確認するのもおすすめです。
中学校の公式サイトには、過去数年分の合格実績が掲載されていることが多く、進学先の傾向や実績がわかります。海外大学・専門学校・総合型選抜枠など、進路の多様性にも注目しておきたいところです。
学費│家計を大きく圧迫しない料金か
私立中学校の場合、公立と比較して学費が高額になる点が大きなポイントです。
授業料だけでなく、入学金・施設費・制服代・副教材費なども必要となります。入学時の初年度納入金が高額になるケースが珍しくありません。
以下に、共学・男子校・女子校・別学を含む私立中学4校の実例を比較しました。
- 初年度納入金の目安
約1,495,000円 - 内訳の主な項目
入学金:340,000円
授業料:930,000円
教育充実費:210,000円
その他費用:15,000円
- 初年度納入金の目安
約1,116,200円 - 内訳の主な項目
入学金:320,000円
施設拡充費:120,000円
授業料:492,000円
設備費等:184,200円
- 初年度納入金の目安
約1,109,700円 - 内訳の主な項目
入学金:380,000円
授業料:492,000円
施設費:105,600円
教育充実費・生徒会費等:132,100円
- 初年度納入金の目安
約1,194,000円(男子) - 内訳の主な項目
入学金:220,000円
授業料:528,000円
施設費:180,000円
諸費用:約266,000円
※本記事に記載の学費・費用は、2025年7月現在の各校の情報に基づいています
受験を検討している学校は、必ず公式サイトで費用明細を確認し、1年間・3年間・6年間の総額を把握することが重要です。
中学校選びにおける注意点
中学受験は、お子さんの中高6年間の進路を決める重要なイベントです。親として「できるだけよい環境で学ばせたい」と思うのは当然ですが、お子さんの意志や性格を後回しにしてしまうこともあります。
以下の注意点を踏まえて、慎重なサポートを心がけましょう。
親の理想を押し付けない
「この学校なら安心」「こんな進路がいい」と感じるのは自然なことですが、保護者の理想をそのままお子さんに押し付けないことが大切です。
とはいえ、小学生のお子さんは、まだ視野が限られていることも多く、「勉強はイヤ」「受験はしたくない」と感じることも想定されます。可能性を広げるために、進路について丁寧に説明してあげることがお子さんの理解の助けになります。
そのうえで、お子さんが将来描いている夢や興味関心、勉強やスポーツなどで力を入れたいことについて話し合いましょう。
親子で対話を重ねながら、納得できる進路を一緒に考えていく。その過程こそが、後悔のない中学校選びにつながります。
偏差値だけで選ばない
中学校選びでは、偏差値をひとつの参考にすることはできますが、それだけで志望校を決めてしまうのはおすすめできません。
学力の高い学校に進学すれば、「よい刺激を受ける」「大学進学に有利」と感じる場面もあります。しかし、大切なのはお子さんにとって無理のない選択かどうかです。
校風や授業スタイル、宿題の量、自由度などがあわないと、心の面でも大きなストレスを抱えてしまうことがあります。場合によっては、せっかく進学しても学校生活が苦しくなってしまうこともありえます。
学校の知名度や評価にとらわれ過ぎず、お子さん自身が安心して学び、成長できる学校を選びましょう。複数の学校をリサーチする手間を惜しまないことが、後悔のない選択につながります。
中学校を直接確認する
もっとも確かな情報を得るには、実際に学校説明会・見学・オープンスクール・学園祭(文化祭)などに足を運び、校舎や授業、行事の雰囲気を肌で感じることです。
パンフレットや公式サイトからはわからない、教室の雰囲気や部活動への打ち込み方などを実際に目にすることができます。
早めに行動することで、お子さん自身の「ここに通いたい」というモチベーションのアップにもつながるでしょう。
お子さんの性格にあった中学校選びには保護者のサポートが不可欠
中学校は、お子さんが友だちとの出会いや学び、部活動などを通じて成長していく大切な場所です。学校を選ぶときは、偏差値や通いやすさだけでなく、お子さんの性格や好きなこと、そして将来の希望にも目を向けましょう。
まずは、お子さんが「こんな学校に行ってみたい」と話せるような、安心できる会話の場をつくることが大切です。このガイドが、お子さんの笑顔と成長にふさわしい中学校選びのきっかけになれば幸いです。
この記事の編集者
- 葉玉 詩帆
Ameba学校探し 編集者
幼少期から高校卒業までに、ピアノやリトミック、新体操、水泳、公文式、塾に通う日々を過ごす。私立中高一貫校を卒業後、都内の大学に進学。東洋史学を専攻し、中東の歴史研究に打ち込む。卒業後、旅行会社の営業を経て2021年より株式会社CyberOwlに入社。オウンドメディア事業部で3年半の業務経験を経て、Ameba塾探しの編集を担当。「Ameba学校探し」では、お子さんにぴったりの学校選びにつなげられる有益な記事づくりを目指しています。