グローバル化が進むに伴い、海外留学ができる高校や英語をはじめとする外国語教育に力を入れている高校が増えています。
「将来は海外の大学に進学したい」「国際的な舞台で活躍したい」と考える中学生・高校生も多く、海外志向に強い高校が人気を集めるようになりました。
とはいえ、カリキュラムの内容やサポート体制は学校によりさまざまです。「海外志向であるか」だけでなく、子どもの目標や志向にあった学校を選ぶことを意識しましょう。
この記事では、海外志向に強い高校の主な特徴をわかりやすく整理してお伝えします。学校選びで押さえるべきポイントや、実際に注目されている高校も紹介しますので、後悔しない学校選びにお役立てください。
なぜ今、海外志向に強い高校が注目されるのか?
海外志向に強い高校が注目されている理由は、グローバル化が進んでいることだけではありません。
語学力・異文化理解能力・国際的な視野を持ちたいと考える学生が増えていることや、海外進学や留学など多彩な選択ができるようになっていることも追い風となっています。
近年は、国際バカロレア(IB)や海外大学との連携、オールイングリッシュ授業、長期留学など先進的な取り組みをする高校も増えました。ここでは、海外志向に強い高校に関する時代的な背景を解説します。
大学の海外進学者数は年々増加傾向に
文部科学省のデータでは、2023年度に日本人学生約8万9,000人が海外の大学へ進学しています(大学間交流協定を通じた留学を含む)(※1)。高校生が参加した短期または中長期の海外プログラムについても2023年のデータで約3万5,000人を記録し、海外進学や留学が決して珍しい選択肢ではなくなってきました。
とくに近年では、韓国・シンガポールなどのアジア圏やアメリカ・カナダなどの英語圏への進学者が増加傾向にあります。早期の段階で海外留学したい子どもや高校の段階から手厚い進学サポートを期待する保護者にとって、「海外大学の出願サポート」「英語での面接・プレゼン指導」「SATやIELTSなどの英語試験対策」などが万全な高校は貴重な存在といえるでしょう(※2)(※3)。
※1 出典:文部科学省「「日本人学生の海外留学状況」及び「外国人留学生の在籍状況」を公表します」
※2 SAT:Scholastic Assessment Test(大学進学適性試験)の略称。主にアメリカの大学に出願する際に必要とされる標準テストで、英語(読解・作文)と数学の2科目で構成されている。大学での学習に必要な基礎学力や論理的思考力を測るという意味で、日本の共通テストに近い。
※3 IELTS:International English Language Testing Systemの略称。英語を母語としない人向けのテストであり、英語圏での生活・学習に必要な英語力を4技能で評価する。
海外の大学が重視する「探究型・表現型」の学び
海外の大学では、単なる学力の高さだけでなく「自ら課題を見つけて解決する力」や「他者と協力しながら意見を伝える力」が重視されます。日本でも同じような風潮が高まっており、探究型・表現型と呼ばれる学びのスタイルを取り入れる中学・高校が増えました。
たとえば、探究型の学びでは、「なぜそうなるのか?」「どうすれば解決できるのか?」などの問いを立て、自ら調べて仮説を立てながら検証・分析をおこないます。
一方、表現型の学びでは、エッセイ・プレゼンテーション・ディスカッションなどを通じて、自分の考えをわかりやすく論理的に伝える力が求められます。
近年はIB(国際バカロレア)やPBL型授業を導入するなど独自性の高いカリキュラムも増えてきて、多彩な学びが可能になりました(※)。
※ IB:International Baccalaureate(国際バカロレア)の略称。スイスに開発本部を置く国際的な教育プログラムで、世界中の大学が認めている高い水準のカリキュラムとして活用されている。
※ PBL型授業:Project-Based Learning型授業の略称。教科書の知識を一方的に学ぶのではなく、実際の課題(プロジェクト)に取り組みながら学ぶ学習スタイル。
海外志向に強い高校の3つの特徴
ここでは、海外志向に強い高校の特徴を解説します。気になっている学校に以下の特色があれば、「海外志向に強い高校」であると評価できます。
①英語力の育成に特化したカリキュラム
海外志向に強い高校では、実践的な英語力を育てるためのカリキュラムが充実しています。たとえば、以下のような指導カリキュラムが導入されていることが多いです。
- オールイングリッシュ授業(英語でおこなう数学・理科なども含むCLIL型授業)
- ネイティブ教員による英語指導(英会話だけでなくアカデミック英語も対応)
- CEFRに基づいた到達目標の設定(B2以上の英語力を卒業時に目指す)
- IELTS・TOEFL対策講座の設置(英語4技能のスコアアップ支援)
- 海外の教科書・教材を使用した授業
- 英語でのディスカッション・プレゼンテーション指導
- オンライン英語講座や海外の講師との交流プログラム
- 放課後・長期休暇中の集中英語講座(English Boot Campなど)
- 英語でおこなう探究学習やPBL活動
日常的に英語を使う環境のなかで、読む・書く・聞く・話すの4技能をバランスよく高めていければ、海外での生活や留学の不安も解消できます。CEFR(セファール)などの指標を使えば自分の英語力も客観視できるほか、スモールステップでコツコツ結果を見える化できるのもポイントです。
さらに、TOEFLやIELTSなどの資格試験対策もカリキュラムに組み込まれており、海外大学の出願要件を満たすスコア取得に向けたサポートが整っていることも。語学の基礎力だけでなく、「入試に対応できる英語力」を実践的に養えるのが大きな特徴です。
②海外大学や留学に直結する進路指導体制
海外志向に強い高校の場合、海外大学や留学に直結する進路指導体制が整っています。
たとえば、海外大学の出願手続きやスケジュール管理を全面的にサポートしてもらえたり、志望理由書(Personal Statement)や出願エッセイの添削指導が充実していたりするのが特徴です。
- 海外進学専門のカウンセラーが常駐
- 志望理由書(Personal Statement)やエッセイの添削指導
- 模擬面接の実施(英語でのインタビュー対策を含む)
- 海外大学の最新情報・進学説明会の開催
- SAT・IELTS・TOEFLの出願要件に応じた受験スケジュール管理と対策支援
- 海外・国内併願に対応した柔軟な進路設計
- 総合型選抜(AO入試)対策講座の実施
- 海外大学出願システム(Common Appなど)の利用サポート
- 海外のサマースクールや短期留学との連携による進路強化
- 卒業生による進学体験談・相談会の開催
また、直接海外進学や留学を視野に入れていなくても、英語力を活かして総合型選抜(旧:AO入試)に挑戦する子どもをサポートしてくれるなど、多彩な進路指導をおこなう学校もあります。進路の選択肢を広く持ちながら、柔軟に将来設計を描きやすい環境といえます。
③国際的な教育認定プログラムの導入(IB・SGHなど)
海外志向に強い高校では、国際的な教育認定プログラムを導入しているケースが珍しくありません。
たとえば、国際バカロレア(IB)認定校では世界中で共通の教育カリキュラムに基づいた指導を採用しています。英語による探究学習・レポート作成・プレゼンテーションなどを通じて、思考力・表現力・国際的な視点を育てます。
また、スーパーグローバルハイスクール(SGH)に指定された学校では、文部科学省の支援を受けて国際的な社会課題の探究や多文化理解に基づく学びを推進しています。大学・企業・国際機関との連携もおこなわれ、実践的なグローバル教育を受けられるのがメリットです。
海外研修や国際交流プログラムが日常的におこなわれていることも多く、多彩な経験を積めるでしょう。留学生との共同授業や海外の姉妹校とのプロジェクトなど、学校にいながらグローバルな経験を得ることも可能です。
海外志向に強い高校の選び方
海外大学への進学や国際的なキャリアを目指すなら、海外志向に強い高校を優先的に志望校にするとよいでしょう。
とはいえ、「海外志向に強い高校」とひと口にいっても実際の指導カリキュラムは学校ごとにさまざまで、「どんな高校が子どもにあうかわからない」と悩む方も少なくありません。
ここでは、海外志向に強い高校の選び方を解説します。
海外進学対応か
海外進学を希望する(または希望する可能性がある)ときは、海外進学対応の有無をチェックしましょう。
一見すると国際的に見える「国際コース」や「英語科」でも、すべての高校が海外大学進学に対応しているとは限りません。海外進学するつもりで入学したのに、進学実績が少なかったり進路指導が手薄だったりすると、いつの間にか選択肢が限られてしまうことがあるので注意しましょう。
学校説明会や公式パンフレットなどを参考に、以下の点を確認しておくのがおすすめです。
- SATやIBなど、海外大学入試に必要な試験への対応があるか
- TOEFL・IELTSなどの英語資格対策が充実しているか
- 実際に海外大学への進学実績があるか(どの国・大学に進学しているか)
- 出願サポートやエッセイ添削などの体制があるか
「英語に強い」だけでなく、「海外進学に強い」かどうかを見極めることがポイントです。
学内外で英語に触れられる環境か
英語力を本格的に伸ばすには、日常的に英語に触れる環境が整っていることが重要です。
たとえば帰国生・留学生が在籍している高校の場合、教室内外で生きた英語を使う機会が多くなります。
そのほかにも、以下の項目について確認してみましょう。
- 帰国生や留学生が在籍しているか
- ネイティブ教員による授業があるか
- 英語によるディスカッション・プレゼンの授業があるか
- 放課後や課外活動でも英語を使う機会があるか
- 短期・長期の海外研修や交換留学プログラムがあるか
- 海外の学校との国際交流がおこなわれているか
- 英語を日常的に使う学内イベントがあるか
英語劇・英語でのスピーチコンテスト・文化祭での英語発表など、英語をアウトプットする機会が多いとよいでしょう。英語を「教科」ではなく「コミュニケーションツール」として自然に身につけやすく、教育的な英語から日常会話まで幅広く習得できる可能性が高まります。
国内外の併願戦略が可能かどうか
近年、海外大学を第一志望としながら、国内の難関大学や国際系学部を併願するという進路スタイルが定着しつつあります。
「海外進学と決めたら海外進学だけ」「日本で進学するなら日本の大学受験対策だけ」など画一的にならず、どちらに対してもフレキシブルにサポートしてくれる高校だと安心です。
ほかにも、以下のようなサポートがあるか確認してみましょう。
- 海外大学と国内大学の併願を想定した進路指導をおこなっているか
- 海外大学出願スケジュール(秋〜冬)と国内大学入試(冬〜春)への対応体制があるか
- 総合型選抜や推薦入試に向けた対策授業・指導があるか
- 過去に併願進学した生徒の進路実績(具体的な大学名や事例)が提示されているか
- 国内外どちらの受験にも詳しい進路指導教員・カウンセラーが在籍しているか
- 生徒一人ひとりにあわせた個別進路面談が定期的におこなわれているか
「今すぐに進学の方針を決められない」と感じる方でも、将来の進路の柔軟性を確保できる高校であれば安心です。受験方式が違っていても個別に戦略を立ててくれる学校なら、進路の選択肢をより柔軟に広げられます。
海外志向に強い注目の高校を紹介
ここからは、海外志向に強い注目の高校を紹介します。各高校でどんな取り組みをしているのか、近隣の学校と比較してみましょう。
国際基督教大学高等学校(東京)
国際基督教大学高等学校(ICU高校) は東京都にある私立高校で、国際バカロレア(IB)には非加盟ながらも、高い国際教育水準を持っています。全校生徒の約3分の1が帰国生で構成され、多国籍・多文化な環境のなかで学べるのが特徴です。
- 帰国生比率が高い(約3分の1)
多様なバックグラウンドをもつ生徒と共に学べる国際的な環境 - 英語力の高い教育体制
ネイティブ教員による授業・英語での探究学習やプレゼンの機会が豊富 - 探究型・表現型の授業が充実
生徒主体のディスカッションやプロジェクト型学習(PBL)を導入 - 海外大学への進学実績が豊富
アメリカ・カナダ・イギリスなど世界各国の大学に合格実績あり - 国内大学との併願にも柔軟に対応
総合型選抜(AO)や推薦入試を含め、早慶・ICU大学などへの進学も可能 - キリスト教に基づくリベラルな教育方針
個性を尊重し、自己理解・他者理解を深める教育を重視 - 国際基督教大学(ICU)との高い教育連携
大学の施設利用や交流イベントを通じた学びの深化が可能
授業は英語を積極的に取り入れた内容が多く、海外経験のある教員やネイティブ教員も多数在籍しているのもポイントです。英語によるプレゼンテーション探究学習(PBL)など実践的なプログラムが充実しており、海外大学への進学実績もあります。
広尾学園高等学校(東京)
広尾学園高等学校は都心の港区にある高校で、国際教育に力を入れている注目校です。なかでも「インターナショナルコース」は英語による探究型学習やプレゼンテーションが特徴で、同校には帰国生や留学生も多数在籍しています。
- 「インターナショナルコース」など国際教育に特化したコース設置
英語で学ぶ授業や海外大学進学に対応したカリキュラムを整備 - 帰国生・留学生も多数在籍
多文化・多言語に触れながら学べるグローバルな校内環境 - ネイティブ教員による英語授業が充実
英語を「学ぶ」だけでなく「使う」授業を実施 - SAT・TOEFL・IELTS対策にも対応
海外大学の出願要件に対応した資格対策講座を校内で受講可能 - 海外大学への豊富な進学実績
アメリカ・カナダ・イギリス・オーストラリア・など多数の合格実績あり - 国内難関大学との併願も可能な進路指導体制
早慶上智・ICUなど国際系学部への進学サポートも充実 - 探究学習やPBL、国際課題に取り組む独自のプログラム
論理的思考力・発信力を高める教育に注力 - 海外研修・国際交流プログラムも豊富
アメリカ、シンガポールなどとの連携校とグローバルな学びを実践
また、UWC(世界のユナイテッド・ワールド・カレッジ)への推薦枠があり、進学の選択肢も豊富です。IBDP(国際バカロレア)認定校で海外研修・国際交流プログラムも豊富など、独自の学習カリキュラムを整備しています。
関西学院千里国際高等部(大阪)
関西学院千里国際高等部(SIS) は、関西学院大学の附属校。国内の大学進学だけでなく海外の大学進学を強く志向する方におすすめの高校です。帰国生・外国籍生徒が全体の半数以上を占める国際色豊かな環境のなかで、日本語と英語のバイリンガル教育を実施しています。
- 国際バカロレア(IB)ディプロマ・プログラムを実施
世界基準の教育課程で、英語による探究・論文・プレゼンテーション力を養成 - 帰国生・外国籍生徒が全体の約半数を占める国際的な学習環境
多文化共生を実感できる日常で異文化理解力と英語運用力が自然に育つ - ネイティブ教員による英語授業・IB指導が充実
英語でのアカデミックな議論・レポート作成を日常的におこなう - SAT・TOEFL・IELTSなどの海外大学入試に対応した指導体制
出願準備、エッセイ指導、面接練習なども手厚くサポート - 海外大学への進学実績が多数
アメリカ・カナダ・イギリス・シンガポールなどの大学に合格者多数 - 関西学院大学への内部進学制度あり
IB履修生も対象で、国内進学と海外進学の併願に柔軟に対応 - 探究活動・国際理解教育が豊富
社会課題をテーマにしたプロジェクト学習やプレゼンテーションを重視 - 一人ひとりに寄り添った少人数制クラス・進路指導
国際的な進路選択を支える個別サポートが充実
最大の特徴は、国際バカロレア(IB)ディプロマ・プログラム(DP)認定校であることです。論理的思考力・表現力・探究力を育みながら、世界中の大学への進学に対応する教育が受けられます。また、関西学院大学との連携により、国内大学進学の選択肢も確保されています。
立命館宇治高等学校(京都)
立命館宇治高等学校は、立命館大学の附属校。国内外問わず幅広い進路に対応する国際教育を提供している国際志向の高校です。国際バカロレア(IB)ディプロマ・プログラムを導入しており、国内外からの帰国生や留学生が多数在籍するグローバルな学習環境が魅力です。
- 国際バカロレア(IB)ディプロマ・プログラムを実施
全科目を英語で履修、世界標準のカリキュラムで国際的な視野を育成 - 帰国生・留学生が多く、多文化的な校風
国籍や文化の異なる仲間と学び、異文化理解・英語運用力が日常的に育つ - ネイティブ教員によるIB指導・英語授業が充実
エッセイ、プレゼン、リサーチスキルなど国際基準の学びを実践 - TOEFL・SAT・IELTSなど海外進学に必要な試験対策を学校内で対応
海外出願サポートも充実していて、エッセイ添削や模擬面接にも対応 - 海外大学への進学実績が多数
アメリカ・カナダ・イギリス・シンガポールなど世界各国の大学に合格者多数 - 立命館大学への内部進学制度を完備
IB修了者や国内進学志望者も対象で、国内外の併願がしやすい進路設計 - 探究型・対話型の授業が中心
批判的思考力・表現力を育てる教育がベースにある - 寮を完備し、全国・海外からの入学者を受け入れ
安定した学習環境で、長期的な進路設計が可能
授業は探究型・対話型が中心で、IBコースではすべての科目を英語で履修できます。国内の大学進学にも強く、立命館大学への内部進学制度も整備されているので、国内難関大学や国際系学部を目指す方は、IGコースを検討してもよいでしょう。
海外の大学が重視する「探究型・表現型」の学びができる高校に注目しよう
近年、「探究型・表現型」の学びができる高校が増えています。とくに海外志向に強い高校では、海外の大学が求める「課題解決力」「探究力」「プレゼン力」を養える環境を整備して独自性を打ち出すようになりました。
「英語力がある=海外志向に強い学校」とは限りません。入学後の進路の柔軟性やサポート体制も確認しつつ、子どもの夢や志向にあった学校を選ぶことが、将来につながる第一歩です。
この記事の編集者
- 中山 朋子
Ameba学校探し 編集者
幼少期からピアノ、書道、そろばん、テニス、英会話、塾と習い事の日々を送る。地方の高校から都内の大学に進学し、卒業後は出版社に勤務。ワーキングホリデーを利用して渡仏後、ILPGAに進学し、Phonétiqueについて学ぶ。帰国後は広告代理店勤務を経て、再びメディア業界に。高校受験を控える子を持つ親として、「Ameba学校探し」では保護者目線の有益な情報をお届けする記事づくりを目指しています。