高校を選ぶ際、偏差値や進学実績を指標にする家庭は多いです。しかし、子どもが高校生活を楽しく充実しながら過ごすには、通学環境・学校行事・部活動なども欠かせません。「通学時間が長い」「入りたい部活がなかった」などのミスマッチが生じると、せっかく入学しても満足のいく高校生活にならないでしょう。
本記事では、偏差値だけにとらわれない高校選びのポイントを解説します。さらに、複数の高校を比較検討しやすいように、通学時間・行事の特色・部活動の内容を比較する表の例も紹介します。3年間過ごす高校を後悔なく選ぶためにも、比較の基準として参考にしてください。
偏差値以外に見るべき3つの軸
偏差値以外に見るべき3つの軸として、「通学時間と実際の生活リズム」「行事の運営スタイルから見える校風」「活動の種類・活動頻度・支援体制」が挙げられます。 いずれも充実した高校生活を送るための軸であり、理想とかけ離れているとミスマッチが多くなるので注意しましょう。
①通学時間と実際の生活リズム
高校生活を無理なく送るためには、「自宅からの通学時間」と「実際の生活リズム」のバランスが大切です。以下の項目をチェックしておきましょう。
通学時間・手段の確認
- 片道にかかる時間は何分か
- 交通手段(電車・バス・自転車・徒歩)の組み合わせが難しくないか
- 通学経路の安全性が高いか
生活リズムとのバランス
- 朝は何時に起きる必要があるか
- 帰宅後の時間の使い方に影響がないか
- 十分な睡眠時間が確保できるか
通学時間が長すぎると、睡眠時間や学習時間を確保しづらくなります。「朝5時起きでないと間に合わない」「帰宅が遅くなりすぎる」などの場合、想像以上の疲れが生じるので注意しましょう。反対に、通学時間が短い学校であれば時間に余裕が生まれやすく、学習や部活に割く時間を作れます。
まずは、先輩たちの生活リズムを見ながら、自分の場合にあてはめてシミュレーションしてください。「〇時に授業がスタートだから〇時に家を出れば間に合う」「部活の終わりは〇時ごろだから〇時には家に着ける」とシミュレーションできれば、入学後の生活もリアルに想像できます。実際の通学ルートを体験してみたり、在校生や保護者の声を聞いてみたりするのもおすすめです。
②行事の運営スタイルから見える校風
文化祭・体育祭など行事の運営スタイルから校風をチェックして、子どもの性格にあう高校を選ぶのもおすすめです。
行事の主導者と自由度
- 生徒主体で運営されているか
- 先生主導でしっかりと管理されているか
- 行事の自由度(表現の幅、ルールの柔軟さなど)
行事の内容・数・関わり方
- 行事の数やバリエーションは豊富か
- 生徒全員が関わる仕組みになっているか
- 学年間の交流があるか
学校によって、行事の運営スタイルはさまざまです。生徒主導で企画・準備をする自由度の高い学校もあれば、伝統や秩序を大切にしている学校もあります。どちらがよい・悪いかではなく、子どもの性格や理想とする学校生活のイメージにあわせて選ぶのがポイントです。
また、行事の頻度・準備期間の過ごし方・学年間の交流なども、校風を表す要素です。オープンスクールや学校説明会の際には、過去の行事の様子などもチェックしておくとよいでしょう。
③活動の種類・活動頻度・支援体制
学校行事だけでなく、部活動・校外活動・ボランティア活動なども高校生活に彩りを与えます。
活動の種類
- 部活動の種類が多様か
- 学内外のボランティアや委員会活動があるか
- 自分の「好き」「興味がある」を追求できるか
活動の頻度
- 活動の週あたりの回数や時間帯に無理がないか
- 長期休暇中の活動状況が自分の生活スタイルにあうか
- 大会や発表会の頻度と規模がイメージに近いか
運動部や文化部など選択肢の多い学校では自分にあった部活が見つかりやすく、部活動自体も盛んであることが多いです。部活動に専念したい子どもであれば、活動頻度が高く朝練や土日祝日の練習もある部活動が向いています。反対に、趣味の一環として部活動をしたい子どもであれば、活動頻度が多すぎると時間の使い方や体力面でバランスを取るのが難しくなります。
また、活動に対してどれだけ学校や先生がサポートしてくれるかもチェックし、長く続けられそうか確認しておくのもおすすめです。顧問の先生が熱心に指導してくれる、設備が整っている、などのポイントは事前に確認しておくとよいでしょう。
保護者と子どもで見るべき視点の違いに注意しよう
高校を選ぶとき、保護者と子どもで見るべき視点が異なる点に注意が必要です。保護者は安全性・授業料・進学実績などの進路を重視する傾向がありますが、子どもは部活動・雰囲気・友人関係などを重視する傾向があります。
保護者と子ども、双方が納得のいく高校を探せるよう意識してください。
【保護者目線】安全・経済性・進路
保護者が高校選びで気になるポイントとしては、主に「安全性」「経済面」「進学実績」などが挙げられます。
通学の安全性・利便性
- 通学時間が長すぎないか
- 通学ルートが安全か
- 災害・交通トラブル時に対処しやすいか
経済的な負担
- 学費の違い(公立・私立)
- 制服・教材・行事費などの初期費用
- 部活動にかかる費用
将来の進路サポート
- 進学実績・指定校推薦の枠の有無
- 進路指導の体制
- 学習サポート体制
通学距離・通学時間・交通手段・周辺の治安などは、毎日の安心につながります。子どもが毎日通うことを考えると、「なるべく安全なルートにしたい」「長時間通学にならないほうがよい」と思うのは自然なことです。とくに公共交通機関を使う場合、混雑状況・乗り換えの有無・万が一運休になったときに別ルートがあるかなども気になります。
また、授業料などの学費・初期費用・部活動にかかる費用など、経済的な負担に関して検討することも欠かせません。初年度はとくに費用がかさむため、事前に把握しておくと安心です。部活の費用は、大会出場・道具・遠征費用など部によって大きな差があるのでチェックしてください。
希望する進路が決まっている場合は、進学実績や推薦枠の有無を確認するのもおすすめです。担任以外に進路担当の先生がいる学校や、三者面談の頻度が十分で情報共有してもらいやすい学校などもあります。
【子ども目線】友人関係・雰囲気・自己表現
子どもが気になるポイントとして、主に「友人関係」「雰囲気」「自己表現」などが挙げられます。
友人関係が築きやすいか
- クラスの雰囲気があいそうか
- 学年間・学年内の交流の多さ
- 自分の「居場所」が見つかりそうか
学校全体の雰囲気
- 生徒がいきいきしているか
- 先生との距離感や関係性
- 自由度のバランス
自己表現ができる環境か
- 部活動や行事での活躍の場があるか
- 個性を受け入れる雰囲気があるか
- 挑戦や失敗に寛容かどうか
「校風が真面目すぎる」「先輩の雰囲気が自由すぎる」など、違和感があれば進学へのモチベーションが下がってしまいます。反対に、すぐに馴染めそうな学校や理想的な過ごし方ができそうな学校であれば、志望度も高くなるでしょう。無理せず過ごせる空気があるかどうかが、高校3年間の満足度に直結します。ほかにも、先生との距離感や関係性、校則や服装の自由さ、オープンスクールや学校説明会で見た先輩の様子なども気になるポイントといえるでしょう。
保護者の視点も子どもの視点も大切にしながら、両者ともに納得して進学できる学校を見つけるのが、満足度を上げるコツです。
合格後に後悔しない高校選びのために複数校を多面的に検討しよう
高校選びは、入学後の3年間だけでなく、その後の進路にも影響する大切な分岐点です。とはいえ、偏差値や通学距離だけに目を向けてしまうと、実際に通い始めた後に「思っていた学校生活と違った…」と感じる原因になることも。
学力面だけでなく、学校の雰囲気・行事や部活の内容・通学しやすさなどを多面的にチェックし、リアルな学生生活をシミュレーションしておくことが満足度を上げるポイントです。
高校は、1校だけを見て判断するのではなく、複数の学校を比較しておきましょう。学校ごとに特徴や違いがあるからこそ、選ぶ楽しさもあります。公式サイトやSNS上の情報を拾うだけでなく、学校説明会やオープンスクールなどに足を運び、実際の雰囲気を感じてみることが納得のいく高校選びにつながります。
- 中山 朋子
Ameba学校探し 編集者
幼少期からピアノ、書道、そろばん、テニス、英会話、塾と習い事の日々を送る。地方の高校から都内の大学に進学し、卒業後は出版社に勤務。ワーキングホリデーを利用して渡仏後、ILPGAに進学し、Phonétiqueについて学ぶ。帰国後は広告代理店勤務を経て、再びメディア業界に。高校受験を控える子を持つ親として、「Ameba学校探し」では保護者目線の有益な情報をお届けする記事づくりを目指しています。