2025年、日本の教育は大きな転換点を迎えていることをご存じでしょうか。高校授業料の無償化拡充、ICT(情報通信技術)を活用した学習支援の本格化、いじめや不登校への対応強化、「多様な学び」の後押しなど、教育政策はかつてないスピードで変化しています。
そこで本記事では、2025年現在の最新教育政策と注目トレンドについて解説します。保護者が押さえておきたい政策動向や変更点に触れていますので、子どもの進路選択に備える参考としてお役立てください。
2025年に注目すべき教育政策トピックス
早速、2025年に注目すべき教育政策トピックを解説します。直近のトレンドを知っておくと、学校や塾を選ぶときや進路選択の参考として役立ちます。
①高校授業料の実質無償化(公立・私立共通)
高校授業料の実質無償化は、「高等学校等就学支援金制度」としてスタートしました。公立高校の授業料は2010年に無償化されており、2020年からは私立高校の授業料も補助されるようになっています。
また、2026年度からは私立高校の授業補助から所得制限が撤廃され、全国平均授業料相当額(45.7万円)まで支援が拡充される予定です。
授業料の無償化により、家庭の経済的負担が軽減されると期待されています。私立高校へ進学する選択肢も広がり、学びたいことを重視して進路を選ぶ家庭も増えることでしょう。
②ICT環境整備と個別最適な学びの推進
文部科学省がとくに力を入れているのが、ICT(情報通信技術)を活用した学習環境の整備と個々の生徒にあわせた「個別最適な学び」の実現です。
実際に、タブレットやノートPCなどのデバイスを採用したり、AIドリルや学習履歴を活用したりする学校も増えています。遠隔授業やオンライン学習も進み、自律的な学びが可能になりました。
- 端末の整備(1人1台)
└タブレットやノートPCなど、生徒1人に1台の学習用端末を配布・利用 - 高速インターネット回線の導入
└安定した通信環境でオンライン学習や調べ学習がスムーズになるよう対策 - 電子黒板やプロジェクターなどの導入
└授業で動画・図解・プレゼンを活用することで理解を深める - クラウド型学習支援ツールの利用
└自宅学習と学校学習を連携できるクラウドツールなどを導入 - 教員のICT研修・サポート体制
└教員がICTを効果的に活用するためのスキル向上トレーニングを実施
また、1人1台の端末と高速大容量の通信ネットワークを学校に整備する「GIGAスクール構想」も進んでおり、「すべての子どもたちのためのグローバルで革新的な学びの入り口」になることが期待されます。
さらに、「学習のスピードが一人ひとり違ってもOK」「関心・興味にあわせた授業を選択する」など、「個別最適な学び」を支援する取り組みも始まっています。
ICT環境整備をしつつ、一人ひとりの解答履歴やミス傾向を分析したり、学校や家庭での学習履歴・成績・提出物を一元管理できるeポータルを導入したり、多彩な取り組みが見られるようになりました。
③多様な学びへの制度対応(フリースクール、地方移行など)
一律の学校教育だけでは対応しきれない、子どもたちの多様なニーズに応える学習環境の整備も急務とされています。
不登校増加を背景に、多様な学びの場(ダイバーシファイド・ラーニングスクール)が整備され、2025年9月時点で37の公立校・21の私立校が稼働(※)しています。
通信制高校・定時制高校・フリースクール・教育支援センターなど学びの選択肢が増えるほか、地方の少人数制・寄宿型教育を選ぶ家庭へのサポート強化もおこなわれるようになりました。
従来の学校ではのびのびと過ごしにくいと感じる子どもにも、学ぶ場が提供されるようになっています。
※文部科学省「学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)の設置者一覧」
④高等教育支援制度の拡充
今後、高等教育(大学・短大・専門学校)における経済的支援がさらに拡充される見通しです。
すでに「高等教育の修学支援新制度」として授業料の免除や返済不要の奨学金制度が確立しています。2025年度以降、さらに多子世帯や私立の理工農系進学者など中間所得層への支援拡充が予定されており、進学に伴う金銭的負担を緩和する効果が期待されています。
大学進学のチャンスを公平化する制度によって、経済的な理由で進学をあきらめる子どもを減らすだけでなく、「進学はできるけどお金がないから国公立単願にする」「本当は進学したい大学があるけど、少しでも授業料が安い学校にする」など進学先の悩みも少なくなるでしょう。
保護者が注目すべきポイントを紹介
ここでは、2025年注目の教育政策と最新トレンドをもとに、保護者が注目すべきポイントを解説します。子どもの進学先を選ぶときの参考にしてください。
高等教育費の抑制と家庭負担の軽減
高等教育費の抑制と家庭負担の軽減に向けた政策が続くことは、これから受験や進学を控える家庭にとって大きな追い風となります。授業料の無償化や経済的な支援が拡充すれば、金銭的な負担をほぼ考えることなく進学の可否や志望校を考えやすくなるでしょう。
とくに、以下の点に注目しながら進学プランを考えるのがおすすめです。
- 学費がいくらになるか
・公立・私立高校ともに授業料実質無償化が進み、経済的負担が軽減
・授業料以外のコスト(制服代・部活動費・留学費など)のシミュレーション - 奨学金・給付金を受けられるか
・返済不要の給付型奨学金が増加し、多子世帯や理工農系分野の学生も対象に
・自分の家庭が受けられる奨学金・給付金をチェック - 家計への影響がないか
・授業料だけでなく入学金や塾代を含めて家計をシミュレーション
・自治体や学校で教育費支援制度について情報収集しよう
さまざまな支援が期待されているとはいえ、完全に無料で進学できるとは限りません。
受験対策として利用する塾・予備校にかかる費用や入学金・制服代・留学費用などは、補助を受けられることがあっても「無償化」とまではいかないことも。事前に家計シミュレーションをしながら進学後の生活もイメージし、無理なく進学する方策を探るのがポイントです。
高校の授業料無償化によって進学選択の幅や経済負担が大きく変わり、教育の質と費用のバランスを取りやすくなります。「子どもが本当に学びたいことは何だろう?」「お金の心配をしなくてよいならどんな学校に進学したいのだろう?」という目線で、将来について考えてみてはいかがでしょうか。
学校選びでICT・デジタル対応状況を確認する
学校選びをする際は、ICT・デジタル対応状況をチェックしてみましょう。
学校によってICT・デジタル対応の進捗度合いはさまざまで、最新のデジタル機器が揃っている学校もあれば、まだまだ紙中心の授業が多い学校もあります。
- 校内のWi-Fi環境が整っているか
- 生徒用タブレットやパソコンの貸与制度があるか
- オンライン授業やハイブリッド授業の導入状況
- 教員のICT活用スキル研修が定期的におこなわれているか
- 学習管理システム(LMS)やデジタル教材が活用されているか
- ICTを活用した個別最適な学びの実践例があるか
- 保護者向けのICT活用説明会やサポート体制があるか
ICTが充実している学校では、生徒一人ひとりにあわせた学習プランを作成でき、苦手分野の克服や得意分野の伸長がしやすくなるのが特徴です。また、教員のICTスキルも高いことが多く、機器やシステムを上手に活用して学習をサポートしてくれるでしょう。
実際の授業風景や生徒の声を参考にしてみると、デバイスの使い方や学習スタイルをイメージしやすくなります。
選択肢を広げるために「多様な学び」の情報収集を
「多様な学び」とは、従来の学校教育にとどまらず子ども一人ひとりの状況や興味に応じて選べる学習スタイルのことです。
フリースクール・通信制高校・地域の学習支援など学校外の選択肢も広がっており、多様な学習スタイルを見つけやすい時代になりつつあります。多様な学びの情報を積極的に収集し、子どもにあった教育になるよう工夫していきましょう。
- フリースクール
- 通信制高校
- オンライン学習
- デジタル教材の活用
- インクルーシブ教育や特別支援教育
- 地域連携プログラムやボランティア活動
- 海外留学や短期交換留学プログラム
- キャリア教育や職場体験学習
- プロジェクト型学習(PBL)や探究学習の導入
- アート、スポーツ、音楽などの課外活動・専門プログラム
- 自己表現や発信力を育むディスカッションやプレゼンテーション
- マンツーマンでの進路指導やカウンセリング
「不登校歴が長くて学校に行くのが不安」という方には、フリースクールや通信制高校がおすすめです。また、「絵画に興味があって高校時代から本格的に絵の勉強をしたい」という方には、学びたいことをとことん追及できる学校がおすすめ。
進学に関する不安・思いはさまざまです。一人ひとりの希望や適性にあわせたサポートができれば、学習へのモチベーションも高くなるでしょう。
子ども一人ひとりが学びのスタイルを選べる時代に
2025年は、教育制度が大きく変わる年です。家庭の教育方針や子どもの希望にあわせて「費用」「学び方」「学習スタイル」まで広く検討できるようになり、選択肢が大幅に拡大していくでしょう。
一方で、「何を選べばいいかわからない」「制度がどう変わっていくのか不安」という方も多いはず。今の教育制度だけでなく今後のトレンドについても情報収集しつつ、親子で話し合いながら、未来に向けた安心で有意義な学校選びを進めていくことをおすすめします。
この記事の編集者
- 中山 朋子
Ameba学校探し 編集者
幼少期からピアノ、書道、そろばん、テニス、英会話、塾と習い事の日々を送る。地方の高校から都内の大学に進学し、卒業後は出版社に勤務。ワーキングホリデーを利用して渡仏後、ILPGAに進学し、Phonétiqueについて学ぶ。帰国後は広告代理店勤務を経て、再びメディア業界に。高校受験を控える子を持つ親として、「Ameba学校探し」では保護者目線の有益な情報をお届けする記事づくりを目指しています。