STEAM教育とは

「STEAM教育」って何? AI時代を生き抜く「実践的な力」の育て方

「STEAM教育」という言葉を最近よく耳にするようになったものの、具体的に何を指すのか知りたい、注目されている理由や経緯が気になるという方もいるのではないでしょうか。

本記事では、AI時代に求められるSTEAM教育の基本知識から、一都三県の実践校まで詳しく解説します。

最近よく聞く「STEAM教育」ってなに?

STEAM教育とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(芸術)、Mathematics(数学)の5つの分野を統合して学ぶ教育手法です。

これまでの日本の教育では文系・理系に分かれ、教科ごとに独立して学習することが一般的でした。しかし、STEAM教育では、これらの分野を横断的に学び、複雑な課題を創造的に解決する力を養います。

STEAM教育が注目される背景には、Society5.0という新しい社会の実現があります。

Society5.0とは、内閣府が提唱する未来社会の姿で、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会を指します(※)。

この新しい社会では、従来のSTEM教育(Science、Technology、Engineering、Mathematics)だけでは対応できない複雑な課題が生まれています。そこで技術的知識に加え、Arts(芸術・リベラルアーツ)を統合したSTEAM教育が重要視されるようになりました。

文部科学省では「STEAM教育等の各教科等横断的な学習の推進」として位置づけ、芸術、文化、生活、経済、法律、政治、倫理などを含めた広い範囲でArtsを定義。

AIが苦手とする創造的思考や柔軟な発想力を育成し、AI時代に人間ならではの価値を発揮できる人材の育成を目指しています。

※参考:内閣府「Society5.0とは

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STEAM教育が子どもに与える影響

STEAM教育が実践されることで、お子さんにはどのような効果や影響があるのでしょうか。ここでは、以下の3つの効果について詳しく解説します。

  • ①論理的思考力・創造性の育成
  • ②問題解決能力・協働性の向上
  • ③AI時代に必要な実践的スキルの育成

①論理的思考力・創造性の育成

STEAM教育の最大の特徴は、論理的思考力と創造性を同時に育成できることです。数学や科学で培った論理的思考を基盤としながら、芸術やデザインの要素を取り入れることで、従来の枠にとらわれない柔軟な発想力を身につけることができます。

たとえば、プログラミングでロボットを動かす際に、単に技術的な課題を解決するだけでなく、「どうすれば人に優しいデザインになるか」「どのような表現で感情を伝えられるか」といった創造的な視点も同時に考えるようになります。

②問題解決能力・協働性の向上

現代社会の課題は複雑で、ひとつの分野の知識だけでは解決できないものが増えています。STEAM教育では、実際の社会課題を題材とした学習を通じて、複数の観点から問題を分析し、解決策を導き出す力を養います。

また、チームでプロジェクトに取り組む機会が多いため、他者と協働しながら目標を達成する経験を積むことができます。これらの経験は、将来社会に出てからも非常に重要なスキルとなるでしょう。

③AI時代に必要な実践的スキルの育成

AIやロボットが普及する将来において、人間には機械では代替できない能力が求められます。STEAM教育で育成される創造性、批判的思考力、コミュニケーション能力、協働性といったスキルは、まさにAI時代に人間が発揮すべき強みです。

また、テクノロジーを理解し、適切に活用する能力も身につけることで、AIを使いこなす側の人材として活躍できる基盤を築くことができます。

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【一都三県】STEAM教育を実践している高校の例

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STEAM教育への注目が高まる中、とくに一都三県では多くの高校が先進的な取り組みをおこなっています。実際の学校現場でどのような教育がおこなわれているのか、特色ある8校の事例を紹介します。

これらの学校の取り組みを通じて、お子さんの進路選択の参考にしてください。

聖徳学園中学校・高等学校 (東京都)

東京都武蔵野市にある聖徳学園中学校・高等学校は、STEAM教育に先進的に取り組む学校として注目されています。

2017年に新設されたSTEAM棟では、最新の設備を活用した教科横断的な学習が展開されています。同校の特徴は、ICTツールを単なる道具として使うのではなく、生徒の創造性を引き出すための手段として活用していること。

アニメーション制作を例に取ると、シナリオ作成では国語力、粘土造形では美術・数学・化学・物理、映像制作では音楽やICTといった複数の分野が自然に組み合わされています。

生徒たちは「正解のない問題」に対してトライ&エラーを繰り返しながら、実社会で必要となる問題解決力を養う学習に取り組んでいます。

また、可動式の机や壁を備えたLearning Commons(多目的学習スペース)は、グループワークから個人研究まで用途に応じてレイアウトを変更でき、多様な学習スタイルに対応するSTEAM教育の拠点として活用されています。


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広尾学園中学校・高等学校 (東京都)

東京都港区にある広尾学園中学校・高等学校は、医進・サイエンスコースを設置し、科学技術系人材の育成に力を入れています

同校では、大学レベルの実験設備を備えたサイエンスラボを設置し、DNA操作や細胞培養など本格的な研究体験の機会を提供。生徒たちは実験を通じて科学的思考力を身につける学習に取り組んでいます。

また、インターナショナルコースも併設し、英語での科学教育や海外大学との連携プログラムを実施。グローバルな視点で科学技術分野の課題に向き合う教育環境を整えています。


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駒込中学校・高等学校 (東京都)

東京都文京区にある駒込中学校・高等学校の理系先進コースでは、埼玉大学STEM教育研究センターとの連携によるSTEAM教育を実践し、生徒たちは実際に手を動かしながら学ぶことで、正解のない課題に対して自ら正しい方向を見出していく科学的な思考力を身につけています。

同校では「AI時代を生きぬく力」の育成を目的として、「何を知っているか」ではなく「何ができるか」を重視した教育を展開しています。

また、中学生向けには東京工業大学の教授を招待し、SFストーリー創作授業なども実施され、「未来社会をイメージする力」の育成に取り組んでいます。


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神奈川県立横須賀高等学校 (神奈川県)

神奈川県横須賀市にある神奈川県立横須賀高等学校は、明治41年創立の伝統校でありながら、最新のSTEAM教育にも積極的に取り組んでいます。

平成28年度にスーパーサイエンスハイスクール事業に指定され、現在は2期目を迎えています。さらに令和4年度からは「STEAM教育研究推進校」にも指定されています。

同校では「未知に、挑もう。」をスローガンとして、学校設定科目「Principia」を3年間にわたって展開しています。生徒が主体的に未知の課題への探究活動をおこない、情報処理や成果発表でICTを活用しながら、創造力や課題解決力を身に着けています。

ノーベル物理学賞受賞の小柴昌俊博士を輩出した学校として、科学分野での人材育成にも定評があります。


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横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校 (神奈川県)

神奈川県横浜市にある横浜サイエンスフロンティア高等学校は、2009年に設立された科学技術系人材の育成を目的とした公立高校です。

同校では「先端科学技術の知識を活用して、世界で幅広く活躍する人間」の育成を目標としており、生徒たちに「驚きと感動」を与える教育を実践しています。

この「驚きと感動」が「もっと知りたい」という知的好奇心を高め、生徒を「知の探究」へと導くという教育方針のもと、理数教育と英語教育に重点を置いた学習がおこなわれています。

企業や大学との連携による実習や研究活動を通じて、生徒たちは実際の研究現場で最新の技術に触れ、課題解決に向けた取り組みを体験できます。

また、国際交流や海外研修も充実しており、グローバルな視点を持った科学技術系人材の育成を目指しています。これらの教育活動により、創造力、探究力、コミュニケーション力、自立力という4つの力を身につけることができます。


▶横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校 の詳細はこちら

神奈川県立神奈川工業高等学校 (神奈川県)

神奈川県にある神奈川工業高等学校は、神奈川県で最初に設立された工業高校として113年の歴史を持ち、「来たる国際社会・超スマート社会で活躍できる『次世代テクノロジスト』の育成」を目標に掲げています。

同校は2022年度より神奈川県立高校指定事業のSTEAM教育研究推進校として指定されています。工業に関する職種を「技能職」「技術職(テクノロジスト)」「研究・開発職」の3つに独自分類し、とくに技術職の育成に重点を置いた教育を実践しています。

日本IBMや横浜銀行などと連携した「かながわP-TECHコンソーシアム」をはじめ、企業や専門学校との連携による実践的な学習プログラムが充実しています。

また、Web3.0やブロックチェーン技術などの最先端技術を学ぶ機会も提供しており、生徒たちは実社会の課題解決に向けた創造的な問題発見・解決能力を身につけています。


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芝浦工業大学柏中学高等学校 (千葉県)

千葉県柏市にある芝浦工業大学柏中学高等学校では、大学との密接な連携を活かしたSTEAM教育を実践

芝浦工業大学の協力により、最先端の学びに触れることができる環境が整備されており、中学段階から工学の基礎を体験的に学習できる特色あるプログラムを展開しています。

同校では学年ごとに段階的な工学教育プログラムを実施しており、構造工学やロボット工学、デザイン工学など幅広い分野の学習機会を提供しています。生徒たちは実際に手を動かしながら学ぶことで、理論と実践を結びつけた思考力を育成できます。

これらの体験的な学習を通じて、生徒たちは将来の工学分野での活躍に向けた基盤を築いています。大学との連携により、高度な専門知識に早い段階から触れることができる点が、同校の大きな特色となっています。


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埼玉県立浦和高等学校 (埼玉県)

埼玉県にある県立浦和高等学校は、伝統ある進学校としての実績を活かしながら、新時代の教育ニーズに対応したSTEAM教育に取り組んでいます。同校では、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)の指定を受けて、科学技術系人材の育成に力を入れています。

課題研究を中心とした探究活動では、生徒が自ら設定したテーマについて科学的手法を用いて研究を進めており、仮説の設定から実験の設計、データの分析、結果の考察まで一連の研究プロセスを体験できます。

これらの活動を通じて、科学的思考力に加えて表現力やコミュニケーション能力の向上も図っています。伝統校でありながら最新の教育手法を取り入れることで、次世代を担う科学技術系人材の育成において重要な役割を果たしています。


▶埼玉県立浦和高等学校の詳細はこちら

STEAM教育をとおして実践的な力を育てよう

AI時代を迎える現代において、STEAM教育はお子さんの将来を左右する重要な学びのアプローチといえます。STEAM教育は科学・技術・工学・芸術・数学の5つの分野を統合することで、従来の教科の枠を超えた実践的な力を育成します。

従来の教育が「知識を覚える」ことに重点を置いていたのに対し、STEAM教育では「知識を活用して新しい価値を創造する」力の育成を重視しています。これは、AIやIoTが普及する現代社会において、複雑な課題を発見し、創造的に解決できる人材が求められているためです。

一都三県の学校事例からもわかるように、STEAM教育は特別な才能をもつ子どもだけのものではありません。重要なのは、お子さんが「やってみたい」と感じた環境と機会を提供することです。

プログラミング体験教室や科学館でのワークショップなど、身近なところから始めることができます。

STEAM教育に重きを置いている学校への進学を考えている場合は、各学校の教育方針や具体的な取り組み内容について詳しく調べることをおすすめします。

お子さんがSTEAM教育を通じて実践的な力を身につけ、AI時代を豊かに生きていけるよう、適切なサポートを提供していきましょう。

この記事の編集者

  • 葉玉 詩帆
    Ameba学校探し 編集者

    幼少期から高校卒業までに、ピアノやリトミック、新体操、水泳、公文式、塾に通う日々を過ごす。私立中高一貫校を卒業後、都内の大学に進学。東洋史学を専攻し、中東の歴史研究に打ち込む。卒業後、旅行会社の営業を経て2021年より株式会社CyberOwlに入社。オウンドメディア事業部で3年半の業務経験を経て、Ameba塾探しの編集を担当。「Ameba学校探し」では、お子さんにぴったりの学校選びにつなげられる有益な記事づくりを目指しています。