多様な学びが整備されつつある昨今、「偏差値」や「ブランド校」だけで進路を決める時代ではありません。
子どもが将来どのような人間になりたいか、どんな生き方をしたいかを起点に、「どのような環境で、どのような学びをしたらその芽が育つか」を考える「逆算型」の学校選びが重要になっています。
そこで、本記事では「未来の姿」から逆算して考える視点で、お子さんに最適な学校の選び方を解説します。
※本記事の学校情報は2025年8月15日時点のものです。最新の情報は各学校の公式サイトでご確認ください。
- まずは「未来の姿」を描くところから始めよう
- ①どんな大人になってほしいかを整理する
- ②子どもの性格・得意・興味を見極める
- 「未来像」をもとに学校を分類しよう
- グローバル志向ならIB・国際コースの有無を確認
- 地域志向なら地域連携・探究教育が盛んな学校
- 科学技術・理系志向ならSTEAM・SSH・課題研究重視校
- わが子の未来の姿から逆算した学校の選び方
- ①学校パンフレット&説明会をチェックする
- ②学校見学や公開行事で雰囲気を感じ取る
- ③OB・OG・在校生の声など多角的に情報を収集する
- 保護者チェックリスト|わが子の「未来の姿」から逆算する学校選び
- 志向別おすすめの学校を紹介|タイプ別モデルケース
- グローバル志向型
- 地域志向・探究重視型
- 理数・STEAM志向型
- 子どもの未来の姿から逆算し、実現するための環境がある学校を選ぼう
まずは「未来の姿」を描くところから始めよう
学校選びの第一歩は、お子さんがどのような大人になってほしいかを具体的に描くことです。 漠然と「よい学校に入れたい」と考えるのではなく、お子さんの将来像を明確にすることで、求める教育環境が自然と見えてきます。
①どんな大人になってほしいかを整理する
まず、お子さんの将来像を具体的に言葉にしてみましょう。たとえば、以下のような将来像が考えられます。
- 海外で働ける人になってほしい
- 地域に貢献する人になってほしい
- 科学技術で社会を支える人になってほしい
- アートや文化を通じて人々に感動を与える人になってほしい
こうした将来像を具体的に言葉にすることで、求める教育環境が見えてきます。
「海外で働ける人になってほしい」なら語学力や異文化理解力を育む環境が必要ですし、「地域に貢献する人になってほしい」なら地域との連携や社会課題への関心を育む教育が重要になります。
お子さん本人の意見も聞きながら、家族全員で将来のビジョンを共有しましょう。
②子どもの性格・得意・興味を見極める
将来像を描いたら、次はお子さんの現在の特性を把握することが大切です。
性格面では、「好奇心が強いか」「協調性があるか」「黙々と粘り強く取り組めるか」など、お子さんの傾向を把握しましょう。
また、得意分野や興味関心も重要な要素です。「英語」「理科」「アート」「音楽」「スポーツ」「探究学習」「ものづくり」など、お子さんが関心をもつ分野を整理しておくと、自然と学びたい学校のタイプが絞られます。
たとえば、ものづくりに興味があり、集中力が高いお子さんなら、技術系の授業や課題研究に力を入れる学校がよいでしょう。
一方、コミュニケーション能力が高く、社会問題に関心があるお子さんなら、ディスカッションや地域連携の機会が豊富な学校が適しているかもしれません。
日頃のお子さんの様子を観察し、どのような環境でもっとも力を発揮できそうか考えてみてください。
「未来像」をもとに学校を分類しよう
お子さんの将来像と現在の特性が整理できたら、それに基づいて学校を分類してみましょう。
学校には、それぞれ特色のある教育方針や環境があります。お子さんの「未来の姿」に近づけるような教育を提供している学校を見つけることが、逆算型学校選びの核心です。
グローバル志向ならIB・国際コースの有無を確認
将来的に海外で活躍したい、国際的な仕事に就きたいなど、海外志向の場合は、IB(国際バカロレア)認定校やインターナショナルコース、英語ディスカッション・エッセイ・海外研修制度の有無など、「英語で考え、英語で発信する力」を育む環境が整った学校を検討しましょう。
地域志向なら地域連携・探究教育が盛んな学校
地域社会に貢献する人になってほしいと考える場合は、地域との結びつきが強い学校を選ぶことが重要です。
地域課題探究や地域NPO・大学との連携、訪問型授業を取り入れる学校では、地域への愛着や課題発見力、社会を支える姿勢が自然と育ちます。
また、地域との連携が盛んな学校では、実社会とつながった学びができるため、学習内容がより身近で意味のあるものとして感じられるでしょう。
科学技術・理系志向ならSTEAM・SSH・課題研究重視校
科学技術で社会を支える人になってほしいと考える場合は、理系教育に力を入れている学校を選びましょう。
とくに注目したいのが、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校です。
SSH指定校では、科学技術系人材の育成を目的とした特別なカリキュラムが組まれており、大学や研究機関との連携も盛んです。こういった環境で学ぶことで、お子さん
わが子の未来の姿から逆算した学校の選び方
お子さんの将来像が明確になったら、その実現に向けて最適な学校を見つけるための具体的な行動を起こしましょう。情報収集から実際の見学まで、段階的におこなうことで、お子さんにもっともあった学校選びができます。
①学校パンフレット&説明会をチェックする
学校のパンフレットを見る際や説明会に参加した際は、基本情報だけでなく、お子さんの将来像と学校の方針が一致するかを重点的に確認しましょう。
「教育方針」「特色ある教育プログラム」「進路実績」「カリキュラム」「学校施設(国際ラボ・探究ルームなど)」をチェックし、描いている将来像と一致する取り組みがあるかを見極めることが大切です。
たとえば、グローバル志向なら英語教育や海外研修の充実度を、地域志向なら地域連携プロジェクトの有無を確認しましょう。
②学校見学や公開行事で雰囲気を感じ取る
文化祭や授業公開、探究発表会などの公開行事に積極的に参加し、実際の学校生活を体感してください。
生徒の表情や活動の様子、教員とのやりとり、校舎内の雰囲気などを親子で観察し、「この学校でわが子が生き生きと学ぶことができそうか?」を感じ取りましょう。
見学後は、お子さんと感じたことを対話する時間をもち、お子さん自身の気持ちや印象も大切にしてください。
③OB・OG・在校生の声など多角的に情報を収集する
学校の公式情報だけでなく、実際に学校生活を経験した人の声を聞くことも重要です。
塾講師や卒業生・在校生の保護者からの口コミ、SNSでの情報、学校主催の交流イベントなどを通じて、「実際の学び」「生活の実感」に基づいた声を集めましょう。
複数の視点から学校を検討することで、より客観的で正確な判断ができるようになります。
保護者チェックリスト|わが子の「未来の姿」から逆算する学校選び
オープンスクールや説明会で使えるように、保護者向けチェックリストを用意しました。お子さんの性格・志向と学校の教育環境の相性を確認するのにお役立てください。
【1】子どもの将来像と興味
- 子ども自身が「将来なりたい姿」を少しでも言語化できている
- 興味・関心のある分野(例:英語、AI、社会課題など)が明確になっている
- 将来的に国内大学・海外進学・専門分野志望などの方向性を把握している
- 詰め込み型より、対話・探究型の学びが向いていそう
- 自分の意見を発表したり、人と協働したりすることに抵抗がない
- 好奇心が強く、調べたり深掘りしたりすることを楽しめる
- 学校案内で、明確な教育理念や将来像の育成方針が示されていた
- 探究・PBL・STEAMなど、主体的な学びの取り組みが具体的にある
- ICT活用(1人1台端末など)やグローバル対応が整備されている
- 総合型選抜や海外大学入試にも対応した指導がある
- 評価方法が定期試験だけでなく、プレゼンやポートフォリオ評価を取り入れている
- 進路実績が「偏差値」だけでなく「多様な進路」に開かれている
- 授業・行事・部活・探究活動がバランスよく設計されている
- 校則や生活指導に過度な制限がなく、自主性を尊重する姿勢がある
- 通学時間・費用・学習負担が家庭の希望と無理なく調整できる
☑が10個以上 → 子どもと高相性。志望校候補として前向きに検討を。
☑が7〜9個 → 説明会や個別相談でさらに深掘りを。
☑が6個以下 → 別の視点での学校選びも視野に入れて再検討を。
志向別おすすめの学校を紹介|タイプ別モデルケース
お子さんの将来像が明確になったら、次は具体的な学校選びです。
ここでは、3つの代表的な志向別に、実際におすすめの学校を紹介します。各校の教育方針や特色ある取り組みを知ることで、お子さんにあった学校がより具体的に見えてくるでしょう。
学校選びは情報収集が重要です。気になる学校があれば、ぜひ学校説明会や見学に参加して、実際の雰囲気を確かめてみてください。
グローバル志向型
まずは海外志向のお子さんにおすすめの学校を紹介します。
広尾学園中学校・高等学校|インターナショナルコース
広尾学園のインターナショナルコースは、アドバンストグループとスタンダードグループの2つのグループに分かれています。
アドバンストグループは帰国子女など英語力のある生徒向けで、英検1級取得を目標とし、スタンダードグループは入学時に英語力を問わず、6年間で自在な英語力を養います。
- 同校にはアメリカ・イギリス・オーストラリア・ニュージーランドなど多国籍の外国人教員が多数在籍しており、それぞれが専門性の高い指導をおこない、国際色豊かな教育環境を提供。 英語での授業が多く、インターナショナルスクールのような環境で学習できます。帰国子女やさまざまな国籍の生徒が多数在籍し、国内難関大学だけでなく海外進学者が非常に多いのも特徴です。
国際基督教大学高等学校|海外進学実績豊富
国際基督教大学高等学校は、東京都小金井市にある私立国際基督教大学の付属校です。生徒全体の3分の2を帰国子女が占め、国際基督教大学へ推薦で進学する生徒も多数います。
- グローバルリーダーを育成するSGH指定校として、課題研究や体験学習などがおこなわれています。 卒業生の多くは国内の大学に進学し、国際基督教大学(ICU)への推薦枠は80名程度ですが、それ以外にも国・公立大学、有名私立大学、海外の大学へと多岐に進学しています。現役合格率は極めて高く、約90%を誇ります。 進路指導では「どこに行く?」という問よりも「何をするの?」という基本的な問いかけをし、生徒自身が考え、探し、決断することを目指しています。
立命館宇治中学校・高等学校|IB導入
立命館宇治高等学校のIBコースは、日本の高校卒業資格と国際バカロレアディプロマ資格の両方を取得できる教育プログラムです。世界中の大学への出願入学資格を得られるIBDPに基づき、1年生から国語以外の全教科を英語で学習します。
- 同校のIBコースでは、「日本語」「日本文学」以外はすべて英語で授業をおこないます。IBの核となる「3つのコア」として、TOK(知の理論)で批判的思考力を育成し、CAS(創造・活動・奉仕)で社会との関わりを実践し、EE(課題論文)で大学進学に必要な探究力を身につけます。
「6つの教科群」では、言語と文学、第二言語、個人と社会、科学、数学、芸術の各分野をバランスよく学習し、全人的な成長を実現しています。
地域志向・探究重視型
続いて、地域志向・探求重視型のお子さんにおすすめの学校を紹介します。
和洋九段女子中学校・高等学校|PBL型プロジェクト
和洋九段女子中学校・高等学校は、PBL(Problem Based Learning:課題解決型学習)を核とした双方向対話型授業で注目されている学校です。「あなたはどう思う?」という問いかけから始まる自由な発想を育む教育をおこなっています。
- 同校のPBL型授業は、教育先進国がもっとも推奨している授業スタイルで、先生の話を静かに聴く従来の授業とは大きく異なります。
授業は「共通認識をもつ(基本知識の確認)」「トリガークエスチョンの提示(知的好奇心の喚起)」「個人での意見構築(創造)」「グループでの討論(協働)」「仲間へのプレゼンテーション(共有)」という5つの段階で進められます。
この過程を何度もくり返すことで、相手の意見を聴き、自分の考えを伝え、チームでよりよいものを創りあげる能力を身につけます。生徒が積極的に参加し、課題に対するもっともよい答えを生み出す力を育む教育環境が整っています。
京都文教中学校・高等学校|地域探究プログラム
京都文教中学校・高等学校は、独自の「文教京都学」と体系的な探究学習で地域課題解決に取り組む学校です。「答えのない問題をどのように解決するのか」といった社会で直面する事柄に対する「考え方」を養うことを目標としています。
- 同校では中学で「文教京都学」、高校で「探究学習」を通じて、「発見力」「探究力」「発信力」を段階的に育成しています。
特筆すべきは「探究ゼミ」で、円山公園キクタニギクプロジェクトでは園芸会社や京都府立大学と連携し、地域の独自性を守るサスティナブルイベントの企画・運営に挑戦しています。竹あかりプロジェクトでは生態調査から商品開発、イベント企画、異文化交流まで幅広い学びを展開し、それぞれが大学の専門分野につながる進路設計をサポートしています。
山形県立小国高等学校|地域連携授業
山形県立小国高等学校は、地方の小規模校ならではの、地域との深いつながりを活かした教育で全国的に注目されている学校です。
- 総合的な探究の時間「白い森未来探究学」では、1年次に地域文化を体験し基礎スキルを習得、2年次に個人テーマの「マイプロジェクト」を立ち上げ、3年次に地域への提案として成果をまとめます。
町や教育委員会、高校魅力化コーディネーターとの連携により、多様な大人からのフィードバックを受けられる環境が整っているのが特徴です。探究活動を通じて行動力や発信力が高まり、「自分が動けば地域が変わる」という実感を得る生徒が増えています。
理数・STEAM志向型
続いて、理系のお子さんにおすすめの学校を紹介します。
渋谷教育学園幕張中学校・高等学校|理数探究カリキュラム
渋谷教育学園幕張中学校・高等学校は、高い進学実績とともに、充実した理数教育環境で注目されている学校です。「実験や観察を通じて探究する能力を培う」ことを重視した理科教育をおこなっています。
- 同校では理科教科に特化した専門棟「理科棟」を設置し、1階が物理地学、2階が生物、3階が化学の専門フロアに分かれています。各フロアには2つの実験室と研究室があり、さらにメモリアルタワー3階には中学生専用の理科室2室も完備しています。
このような充実した施設・設備のもと、生徒一人ひとりが実験や観察を通じて科学的な探究力を身につけ、理数系分野への深い理解と興味を育む教育が展開されています。理論学習と実践的な実験活動をバランスよく組み合わせることで、将来の理数系人材としての基礎力を身につけることができます。
工学院大学附属中学校・高等学校|STEAM教育
工学院大学附属中学校・高等学校は、先進的なSTEAM教育で注目されている学校です。
- 同校では、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)を融合したSTEAM教育を積極的に導入しています。
とくに注目すべきは、3Dプリンターやデジタル機器を備えた「Fabスペース」での創造的な学びです。生徒たちは3Dモデリングや映像制作などのクリエイティブな活動を通じて、実践的なスキルを身につけることができます。
また、Microsoft Showcase Schoolに認定されており、生成AIを活用した授業も展開。ICTを単なる道具ではなく「学びの橋」として位置づけ、すべての教科で情報活用力と表現力を育成する教育環境が整っています。
神戸市立工業高等専門学校|探究型学習を重視した教育課程
神戸市立工業高等専門学校は、5年一貫の専門教育をおこなう工業系の高等専門学校です。
- 同校では、低学年で一般教養、高学年で専門科目を学ぶくさび型カリキュラムを採用し、5年間で大学工学部と同等の専門知識を身につけることができます。
とくに注目すべきは、3Dプリンターや3Dスキャナー、レーザー加工機などの最新機器を活用した実験実習です。生徒たちは実践的な技術習得を通じて、創造性豊かなエンジニアとしての素養を育むことができます。
また、神戸市外国語大学との連携により文理融合教育を実施し、産官学連携活動も活発におこなっています。多様な進路選択が可能で、就職・進学どちらも高い実績を誇る教育環境が整っています。
子どもの未来の姿から逆算し、実現するための環境がある学校を選ぼう
学校選びでは、「偏差値」や「進学実績」だけでなく、お子さんが描く「未来の姿」を具体化し、その実現にあった教育環境を逆算して選ぶことが鍵となります。
未来の姿を出発点に、お子さんの性格・志向にあった学校タイプを絞り、具体的な学校を調べ、親子で話し合うプロセスを通して納得のいく選択をしましょう。
最終的には、お子さん自身が「ここで学びたい」と感じる学校を選ぶことがもっとも重要です。学校説明会や見学会に積極的に参加し、実際の雰囲気を確かめながら、お子さんの可能性を最大限に伸ばせる学校を見つけてください。
この記事の編集者
- 中山 朋子
Ameba学校探し 編集者
幼少期からピアノ、書道、そろばん、テニス、英会話、塾と習い事の日々を送る。地方の高校から都内の大学に進学し、卒業後は出版社に勤務。ワーキングホリデーを利用して渡仏後、ILPGAに進学し、Phonétiqueについて学ぶ。帰国後は広告代理店勤務を経て、再びメディア業界に。高校受験を控える子を持つ親として、「Ameba学校探し」では保護者目線の有益な情報をお届けする記事づくりを目指しています。